広告デザイナーからゲームのグラフィックデザイナーへと転身し、SCE作品で着々とキャリアを積み重ねていった渡辺さんの新たなチャレンジ。それは、PS3®で10月25日に発売予定の『THE EYE OF JUDGMENT』シリーズだ。渡辺さんは、この作品ではシニアゲームデザイナーとしてタイトル全般をディレクションする立場にいる。企画のキッカケは、カメラで2次元バーコードを読み取り、コードから3Dの計算を行うことができる、Sony CSLが開発した“サイバーコード”の技術。『THE EYE OF JUDGMENT』でカードをカメラ(PLAYSTATION®Eye)が読み取って、リアルとバーチャルを融合できるのは、この技術のおかげだ。
ソフト同梱のUSBカメラ、PLAYSTATION®Eye。
「サイバーコードの技術デモを見て、“ええ? こんなことができるんだ!”と驚いて。その驚きを一人でも多くの方に共感してもらいたいと思ったのが開発の始まりです。ただ、ちょうどそのとき、僕はどこのチームにも所属してなかった。ひとりで企画を考えるしかありませんでした。そこで出てきたのが、カードをカメラにかざすとキャラクターが出てくるという今の『THE EYE OF JUDGMENT』のシステムでした。なぜ、そこでカードゲームを題材に選んだかというと、なじみやすさがあるからですね。新しいテクノロジーなんだから、見たこともないゲームシステムを新たに考えて、新規性で勝負する手もありました。でも、みんながまだなじみのない新しいテクノロジーと新しい遊びをくっつけてしまうと、さらにわかりにくくなってしまう。だったら、認知度が高いカードゲームという遊びを新たな手法で見せるほうが、ユーザーもイメージしやすいだろうなと考えたんです」
それが、今から約3年ほど前。来るべき次世代機=PS3®の登場を見据えて『THE EYE OF JUDGMENT』の企画を実現しようとしていた渡辺さんは、まずはSCE社内でこのアイデアを通すため、以前一緒のチームにいたプログラマーと共に、とりあえず動くデモ映像をつくって、社内プレゼンに駆け回った。その努力の甲斐あって、いよいよ『THE EYE OF JUDGMENT』に開発のゴーサインが出た。
「僕はこのゲームでなによりも、新しいテクノロジーにスポットを当てたかった。最初は、今のようなオリジナルのカードゲームではなく、既存のキャラクターや作品を題材にする話もあったんです。でも、それはやりたくなかった。“何かの続編で、ちょっと変わったシステムのゲームが出るよ”では、せっかくのテクノロジーに注目してもらえないですからね。それよりも“今度出たSCEの新作、こんなことができるんだって!”と、遊んだ人のクチコミでカードゲームのコミュニティが広がっていったほうがいいと思ったんです。それに、まずはこのゲームを世に出し、テクノロジーのすばらしさも認知してもらった上で、既存のキャラクターや作品を題材にしたゲームを出したほうが効果的だと思いますしね。」
こうして話を聞くと、渡辺さん自身、かなりのカードゲーム通なのではないかと思うが、実は……。
「僕、この企画を始めるまで、一切カードゲームをやったことがなかったんですよ。なので、開発のゴーサインが出る前から、既存のカードゲームをひたすら買い込んで、必死で勉強しました。そしてわかったのが、“もし自分がカードゲームファンだったら、絶対に自分でつくろうなんて思わなかった!”ってことですね(笑)。ものすごく大変なんですよ。幸い、開発が進むにつれてカードゲーム好きのスタッフも僕自身の知識量も格段に増え、これまでのカードゲームの要素をいかしながらも、『THE EYE OF JUDGMENT』ならではの要素を入れたゲームシステムを構築することができました」
2006年のタイトル発表以降、なにかとビジュアル面の話題が先行しがちな『THE EYE OF JUDGMENT』。だが渡辺さんは、このゲームを触れば必ずや、そのゲーム性の高さに驚いてもらえるはずだと語る。ここで気になるのが、他のカードゲームにはない『THE EYE OF JUDGMENT』ならではのポイントだ。それは?
「ゲームのベースに、3×3のマスを取り合う陣取りゲームがあることですね。カードを使って遊ぶんですが、プレイする感覚はチェスに近いですね。3×3のフィールドと聞くと狭く思いますが、やってみると思ったよりも広く感じますよ。マスにカードを置く向きによって攻守の有利不利も変化しますし、そこはウォーシミュレーションゲームなどにも近い感覚がある。といいつつも、プレイヤー間の駆け引きを楽しむカードゲームの醍醐味もちゃんと入ってる。そして、世界観のベースはゲームファンなら誰もが心を惹かれる正統的なファンタジー。『ウォーハンマー』シリーズのように、フィギュアをコレクションしながらそれを使って遊ぶ楽しさも味わえる。国内でも海外でも、幅広い層のユーザーに楽しんでもらえる“おいしいとこ取り”なゲームになってます(笑)」
シリーズ第1弾として発売される『THE EYE OF JUDGMENT BIOLITH REBELLION 機神の叛乱 SET.1』に続き、2008年2月には『〜SET.2』、6月には『〜SET.3』と、いわゆる拡張パック的なシリーズの発売も決定済み。さらに今後は、このシステムを活用しながら、さらに違った展開も実現可能だと渡辺さんは言う。
「せっかく、新しいテクノロジーをゲームとしてここまでシステム化できたんですから、違ったキャラクターやルールをのせれば、そこには新たな市場が誕生すると思うんです。市場を活性化するためには、より広いニーズにこたえる必要があります。例えば、かわいいペットを飼ってみるものとか、スポーツゲームとか。カードを3枚ずつ並べて、バスケットの3on3をプレイしても面白いじゃないですか。この先も、いろいろなチャレンジができそうです。試遊していただいた人の中には、これを遊びたいからPLAYSTATION®3を買うと言ってくれる方もたくさんいましたし、PLAYSTATION®3と共に『THE EYE OF JUDGMENT』の世界が広がっていくといいですね」 |