現在、大ヒット中の『モンスターハンターポータブル 2nd G』を筆頭に、PSP®で発売された『モンスターハンターポータブル』(以下『MHP』)シリーズ全てのディレクションを手がける一瀬さんが生まれたのは、大阪府大阪市の北側にある旭区。両親と3歳年下の妹の4人家族で育った彼が、幼少時代いちばん心に残っているのは、やはりゲームの思い出だ。
「最初にゲームに触ったのは、小学校3年生か4年生くらいの時ですね。友達の家に遊びに行った時に、『マリオブラザーズ』を見せてもらって、“あぁ、テレビゲームでこんなんあるんや。今まで全然知らんかったわ!”と思ったのがゲームを知ったキッカケです。ファミコンが流行ってたのは知ってましたけど、家になかったし、それまでやる機会がなかった。外で遊んでたり、家に友達呼んでワイワイやってるほうが楽しかったので、それまではゲームで遊ぶ機会がなかったんです」
ファミコンを持っている友達の家に行ったのも、ほんの偶然。そこで、遅ればせながら初めてテレビゲームに触れた一瀬さんは、すっかりその虜になってしまった。
「当時はファミコンも高かったので、ウチで買ってもらうこともできなくて。だから、毎日、学校が終わったら5〜6人でつるんで、友達の家に上がり込んで遊ばせてもらってました。でも、それがあまりにも面白かったので、そのうち親に泣きついて、その年の年末……誕生日だかクリスマスだかのプレゼントとして、やっと買ってもらうことができました」
一緒に買ってもらったソフトは、『バルーンファイト』と『アイスクライマー』(以上、任天堂)。テレビゲームの魅力に取り憑かれた一瀬さんは、そのふたつのソフトをずっと遊んでいたという。
「学校が終わって家に帰ってから、毎日2〜3時間はやってましたかね。それくらいの時期になると、友達もみんな家にゲーム機を買い込んでましたから、自分の家に友達を呼んだり、人の家に遊びに行ったりしながら、ひたすらゲーム。持ち回りで、みんなの家でゲームを遊ぶ毎日でした」
では当時、印象に残っているタイトルは?
「ナムコのゲームが大好きでしたね。『ドルアーガの塔』とか『ワープマン』とか。『ワープマン』は、『ディグダグ』なんかのように、ナムコお得意の1画面で遊ばせるタイプのゲーム。四方から敵が出てきて、それを倒しながら進めていくんです。
ナムコ好きになったのには、ほかにも理由もあるんです。他のメーカーのゲームに比べて、値段がひと回り安かったんですよ(笑)。確か、4,000円しなかったような気がします。父や母に買ってもらったソフトももちろん多いですけど、自力でお小遣いを貯めていけば、3ヵ月か4ヵ月したら1本買える。他社のゲームは、もう一踏ん張りしないと無理だったので、当時の小学生にとってナムコは神でしたねぇ(笑)」
一瀬さんの最寄り駅は、京阪電鉄の千林駅。電車で3〜40分ほどで梅田にも行ける、下町の雰囲気を色濃く残した大阪のベッドタウンだ。そこには、天神橋筋商店街や駒川商店街と並んで、大阪で三本の指に入る長さのアーケードを誇る一大商店街、千林商店街がある。一瀬少年も、少ないお小遣いを握りしめて、この商店街に通いつめた。そんな一瀬さんに、ゲーム以外の思い出を尋ねてみると?
「習い事は、親にいろいろやらされてましたね。書道、水泳、そろばん……とっかえひっかえ(笑)。でも、勉強に関してうるさく言う親ではなかった。ゲームを遊んでても、叱られませんでしたからね。塾も中学時代に一度通ったことはあったけど、すぐ辞めてしまいました。親のほうが“もう行かんでええわ!”って言い出して(笑)。僕は、友達も一緒やったし、塾を楽しんでたんですけど、親から見ると“面白くなさそうだから、辞めてええよ”と。僕もつい、素直に従ってしまいました。特に疑問にも思わず、"まあええか。"程度に思ってました(笑)」
このエピソードでわかるように、一瀬さんは「いたって素直で真面目な子供でした」と自らを振り返る。
「自分で言うのもなんですけど、人に言われたことは必ず守るええ子やったんですよ。ヤンチャするわけでもなく、どっちかというと……クラスにひとりはいるような(笑)。勉強も嫌いではなかったですしね。それが高じて、中学の頃なんか、通信簿に“学生の鑑”と書かれてビックリしましたよ(笑)」
彼の真面目さを、さらに頷かせるエピソードもある。
「ゲームをやっていない時は、よく図書館に通ってましたね。推理小説が面白くて、一時期すごくハマッてたんですよ。図書館に行けば、山ほど本があって、しかもタダで読める。あのシステムは、画期的ですよね(笑)。“もしかして、俺、無限に本読めるんちゃう?”と、小学生の時に気づいてしまった。それからは、週に一度くらい、読みたい本をまとめて借りてました。
好きだったのは、江戸川乱歩の明智小五郎シリーズ。小林少年が、羨ましくてね。“たまらんなぁ、コイツ”と思いながら読んでました(笑)。明智小五郎よりも、小林少年派ですね、僕は。何でもそうなんですけど、主人公よりも脇役が好きなんですよ。一歩退いてる立ち位置の役どころのほうが、味があっていいですね」 |