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いいゲーム作りに欠かせないのは運。自分で何かを頑張ることで、運を手に入れることができるんです。 一瀬泰範

最新作『モンスターハンターポータブル 2nd G』は?

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 人気タイトルのファンに向けた移植に終わることなく、PSP®で大量の新規ユーザーの獲得に貢献した『MHP』シリーズは、順調に作品を重ねていった。そして、前作から約1年経った08年3月27日、ついにファン待望の最新作、PSP®『MHP2ndG』が発売された(※4月8日現在150万本以上を出荷)。大ヒットとなった前作を経て、さらにユーザーの期待が高まる作品となったが?

「『MHP2nd』が大ヒットしたことで、それまでと周囲の対応が大きく変化したことを実感しました。特にメディアですね。雑誌の記事も扱いが大幅に増え、本当に原稿チェックをするだけで1日の仕事が終わってしまう日もあります。それはとてもありがたいことでもありますね。いろんな意味で、今回の『MHP2ndG』では、前作以上のプレッシャーはあったかも知れません」

 そんなさまざまなプレッシャーと期待を受けて登場した『MHP2ndG』。PSP®でのシリーズとしては3作目となるこの作品で、今回、一瀬さんがいちばんこだわったポイントはどこだったろうか?

「まず、『MHP2nd』の正統的な続編であること。つまり、『MHP2nd』からのデータの引き継ぎを絶対可能にするということですね。そして、コミュニケーション要素をさらに盛り込むこと。実際、『MHP2nd』がたくさんのユーザーに受け入れられた理由のひとつは、コミュニケーションプレイの面白さにあったわけですから、これも当然でした。そこらへんは、プロデューサーの辻本さんからオーダーがあったものをゲームの内容に変換していく感じですね。
 また、ゲーム的な部分でこだわったのは、まず“G級”であること。続編である限り、ゲームを引き継いで遊ぶ人も多くなると思うので上位よりも上の存在のクエストを入れるのはマスト。ユーザーにとって、『MH』シリーズの最大のキモは、モンスターの存在。そのためには、モンスターを強化しましょうと。新規モンスターだけでなく、従来のモンスターに関しても、攻撃力を上げるというような単純なアッパーな状態ではなく、何かしら手を加えて、少しでも新しい遊び方ができるようにしなければと考えました」

 そういう意味では、『MHP2ndG』は、開発陣にとって非常にハードルの高いタイトルだったのでは?

「確かにそうですね(苦笑)。本音を言えば、前作のことを考えず、一度ゲームを白紙に戻して、イチから作り直したほうがゲームバランス的には、ある意味楽なんですよ(笑)。特に、データの引き継ぎに関してはそうですね。データの引き継ぎというのは諸刃の剣で、ユーザーにとっては嬉しい要素ですけど、作り手にとっては、ゲームの命が短くなってしまう恐れがある。でも、そこは絶対外せないですし、引継ぎを行うと決めちゃったので、いままでのユーザーの掛けた時間をできる限り無駄にしないようにしなくちゃいけないと、システム的にどうしても無理のある部分以外は、何が何でもデータ引き継ぎは実現させると決めました。
 これが、新規スタッフでの仕事となると、不安要素も大きいですが、幸い、開発チームは『MHP2nd』のメンバーが残ってくれている。前2作のノウハウもありますし、クオリティを出すことに関しても十二分に信用できるスタッフが揃っていますから、そこに不安は全くなかったですね。逆に言えば、そのメンバーじゃないと、とてもできないですよ」

 そしてもうひとつ、『MHP2ndG』には課題があった。それが、新規ユーザーの開拓だ。

「せっかく前作があれだけ話題になったんですから、それを聞きつけて、今回から『MHP』を始めてみたいと思っている層も、確実に取り込まなくてはならない。でも、ユーザー心理として、シリーズが続いているとなんとなく敷居が高いし、今から参加して大丈夫なのかという不安を感じる方もいると思うんです。そのためには、かなり間口を広くしなければならないですよね? アクションゲームに馴染みのない、女性ユーザーにも遊んでほしいという野望もありますし(笑)。このゲームは、ありがちな感じで企画書に書いてしまいそうな、“幅広い年齢層にアピールする、みんなが楽しめるゲーム”を、本気で視野に入れてたりするんですよ(苦笑)」

 そのために、今回一瀬さんたちがこだわった新規要素が、一人プレイ時にプレイヤーをサポートしてくれる“オトモアイルー”のシステムだ。複数匹用意されたオトモアイルーは、性格によってさまざま。育成要素も楽しめ、まさにプレイヤーの頼れる相棒となって活躍してくれる。

「前々から『MHP』は、女性ユーザーにも注目してもらえるように、かわいいアイルーが絡む要素を全面に押し出してきたんですが、今回はその決定版(笑)。アイルーと一緒にクエストできるって、やっぱり楽しいじゃないですか。アクションゲームがまるでダメという人には、さすがにちょっと難しく感じるかも知れないゲームですけど、 “オトモアイルー”がいれば、ずいぶんプレイしやすくなりますよ。
 このゲームは、最初のうちは素材の採取がメインになるんですが、同じクエストも“オトモアイルー”を連れていると、全く雰囲気も変わりますね。実際、開発中にシステムのチェックをしていた我々も、オトモアイルーのおかげで、見慣れたゲームが新鮮に感じました。オトモアイルーは、初代からもネタとしてはあったみたいです。ムービーでは、そういうシーンもありましたし、僕もずっと入れたいと思っていました。やっと今回、実装できましたね」

 『MHP』ファンにとっては、前回も大好評を博したユーザー大会「モンスターハンターフェスタ」が再び開催されているというのも朗報だ。今年の「モンスターハンターフェスタ ‘08」は、4月26日の福岡大会を皮切りに、東京・札幌・大阪・名古屋と全国5会場で地区大会を開催。予選は大闘技場での「ババコンガ討伐」、本選は樹海での「ナルガクルガ討伐」でタイムアタックを競い、各地区の上位チームが5月25日、東京・品川インターシティホールで激突する。

「前回は、全部で1万人以上の方に参加していただいて、僕らが思ってた以上に盛り上がりました。今思い出してもすごかったですね。どの会場も、人の海(笑)。アーケードゲームを開発していた時は、ロケテストなり、ゲームセンターなりで、ユーザーが遊んでる姿を実際に目にする機会はありましたが、コンシューマだと東京ゲームショウや試遊会で、初めてそのゲームに触れる人を見るのがせいぜい。やり込んだ方のプレイを目にするチャンスはありませんでしたから、フェスタの熱気には驚かされました。
 今年は、地区予選大会に来てくれた方に、オトモアイルーをデザインした各会場ごとの限定ご当地クリーナーのプレゼントもありますし、予選に参加しない方もソフトを持って遊びに来てくれれば、来場者同士でクエストに挑戦できます。カードゲーム大会も開かれますから、『MHP2ndG』を1日中満喫してもらえます。今回のフェスタは僕も今から楽しみでしょうがないです」

 そう嬉しそうに語る一瀬さんは、こと『MHP』に関しては、ユーザーが自分のタイトルを遊んでくれている場面を目撃することが多く、そのたびに、ゲームクリエイターであることの嬉しさを噛み締めているという。

「それが、PSP®で作ってよかったと思う瞬間でもありますね。電車の中でプレイしてたり、飲食店でグループになって遊んでくれてたりするのを見ると、“おお、やってくれてんのや”と感動します。僕も昔、学生の頃は電車の中で、友達と好きなゲームの話であーでもない、こーでもないと盛り上がってました。それと同じように、自分の作ったタイトルの話をしてくれたり、遊んでくれてる人がいるのは、ほんまに嬉しい。電車に乗ってて、学生さんが“俺、昨日『モンハン』で○○○○のアイテム作ってん”なんて会話を耳にすると、心の中でウキウキしながら“それ、俺が作ったゲームやねん!”って、めっちゃ言いたくなりますね(笑)。
 きっと、その学生さんたちが大人になったときに、僕がそうだったように“あのゲームよかったよね”と『MHP』を思い出してくれるんじゃないか。そうなってくれたら、ほんまにいいですよね」

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ゲームディレクター志望者へのメッセージ

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 最後に、このインタビュー恒例の質問を。これからゲーム業界を目指す人が、一瀬さんのようにゲームディレクターという仕事に就くために、必要なこととは何だろう?

「まずは運(笑)。なんやそれ。と言われそうですけど……。ただし、勝手に流れ込んでくる運任せじゃいけない。自分で何かを頑張ることで、運は手に入れていけるものだと思うんです。それは、人の繋がりを作ることだったり、自分で何か専門的な勉強することだったり、人によっていろいろありますよね。ひとつ他の人に負けない専門分野を持っていれば、誰かがそこに目を付けてくれることもある。会社を休まず働いていれば、一生懸命な仕事ぶりを認めてもらえることだってある。それが時期的なものと上手く重なれば、より強力な運になる。もちろん、コミュニケーション能力とか、社会人としての礼儀を知っているのは、人として当たり前のこと。その上で、些細なことでも、自分が努力すれば、運は呼び込めると思うんですよね」

 とはいえ、一瀬さんが経験してきたプランナー、ディレクターという職種には、秀でたアイデアを出す才能も必要では?

「それに関しては……ぶっちゃけ、自分に才能がなくてもいいと思うんですよ。僕は、できるヤツがやればいいという考え方(笑)。特にディレクターはそうですね。すごく才能のある企画マンが何人かいて、すごく絵の上手いデザイナーが何人かいれば、いいゲームはできてしまう。僕は、彼らが“いい感じ”に仕事できる環境を作ってあげられれば、問題はないんです。僕に何か才能があるとすれば、才能のあるスタッフを信用して、現場の雰囲気をよくしてあげられることができたということじゃないかなぁと。それが、僕の運のよさでもあったのかなと思いますね」

 スタッフを信用して、彼らがスムーズに仕事できる環境を作ること。一瀬さんの言葉は、ゲームの開発がチームワークで成り立っていることを、改めて実感させてくれる。

「その要になるのが、企画マンであり、ディレクターだと思うんですよね。僕には、新人企画マンだった頃に、先輩から聞いた、すごく印象に残っていることがあるんです。それが、“企画マンは他のスタッフの生活を養う立場。もし立てた企画が破綻したら、他のチームメンバーの努力が全て水の泡になってしまう。だから自分は、全てにおいて盾になって、みんなを守らなきゃいけないんだ”という言葉。当時は、全然ピンとこなかったんですけど、今はなるほどなぁと思いますね。僕もまだまだ偉そうに言える立場でもないですけど、この言葉を心に留めて、頑張っていければと思っています」

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2008年3月 金澤 浩隆氏
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