
本インタビューについて
『勇者のくせになまいきだ。』は、今までRPGの中で主役だった「勇者」ではなく、脇役の「モンスター」に焦点を当てる、いわば「いつもの逆をやってみたら?」というアイデアから生まれた作品です。ですので、プロモーションもいつもの逆ができないか? という思いつきから「取材を受ける自分たちで取材してみるのはどうだろう」ということになりました。座談会形式で進めたインタビューを、数回にわたり不定期にお伝えします。
本作を作った裏には、「モテたかった」という衝撃の事実が隠されていたのだった!
――モテたいってことなので、このインタビューで人気が出てくると良いですね。だけど、WEBは競合だからとWEBページを紹介するのを嫌がる雑誌さんもあるんですよ。
山本 似たような話で、昔ファミコンが全盛期だった頃に、フジテレビでひょうきん族などを手がけたプロデューサーの横澤彪さんという方が、「これからのうちらのライバルはXチャンネルだ」と言ってた時期があったんですね。関東だと2ch、関西だと1chかな?要するにファミコンを繋いでいるチャンネルのことを、彼はXチャンネルと呼んでいたんです。「ゲームにチャンネルを取られるぞ」ってことを言いたかったんですね。
中西 だけど結局、テレビとゲームは共存しているし、ネットと雑誌も共存すると思うんですよね。
山本 ネットの情報って、結局どこまでいっても信憑性への不安がつきまとうし、その辺りの安心感を求めるなら雑誌を読むってことで、まずは共存してますよね。
中西 でも、このゲームの魔王は、「ここまできたら攻略法はまとめWikiでも見てくれ」って言ってるんですよね(笑)。
宮崎 「あればだけどね」って(笑)。
一同 誰か作ってくれるといいですね〜(笑)。
――前回のお話しで、コンセプトが形になるまではわかりました。では、そこからゲームのビジュアルやシステム、サウンドをどのようにして決めていったんですか? もう少し突っ込んで聞かせてください。
山本 まずビジュアルですが、ドット絵を代表とする8bitの文化は、例えばちょっと前にパルコが広告で使ってたりと、表現方法としては二枚目。モテそうだしということで。
中西 で、ファミコンのドラクエ2とかのドット絵のキャラを改めて見てみてわけですが、当時は使えるドット数も色数もすごく少ないんですけど、表現力はすごく高いんですよ。とにかくドットに無駄がない。見る側の想像力を働かせることも計算にいれたうえで完成されていると思いました。
山本 という上で、見せ方で進化させようということを模索しましたね。
中西 いろいろ試してみましたね。当初はPLAYSTATION®3ということで、HDRとかシャドウマップとか次世代技術でドット絵のキャラがいる空間をリアルに描こうとか。当時の1ドットを16ドットぐらい使って書いて、滑らかに動かすとか。ドット絵としての残虐表現の限界に挑もうとか。
――それも見てみたかったですね。
中西 最終的にPSP®でいくことになって、現在のものに落ち着きました。
山本 キャラデザインは、「ゲームやろうぜ!2006」に個人で応募して合格した、小林陽明君というデザイナーの手によるものなんですが、小林君は独学でデザインの勉強もやりつつ、ちょっと前まで木村カエラのバックバンドでベース弾いてたりしていた、かなりモテ属性を持った子なんです。
――そんなモテそうなポジションからこの業界へ!
山本 彼は世界中で読まれるような絵本を作りたいという野望を持ってるんですが、まあ、それもモテ野望でカチンとくるんですが(笑)、 もともとドットテイストのデザインにも長けていて、このゲームの指向性に見事はまったんですね。
中西 ちなみに、それに対してぼくらの野望はカエラに会いたい、でしたもんね。今日こそ来ないんですか?
――来ませんよ。
ドット絵のキャラをリアルに描こうという試み
魔王が「まとめwikiでも見てください」って言うんです
――ビジュアルはわかりました。システムはどうでしょう?
山本 ひとつのシステムで成立するような、ファミコンイズムな思想が根本です。宮本茂さんのファミコン初期時代の作品、「クルクルランド」や「デビルワールド」とか、ある種インダストリアルデザインとして無駄がないものってカッコいいよなぁと。とはいえ、ファミコン初期の、4つの面をひたすら繰り返して遊ぶタイプのままでは、今の時代さすがにツラい。コンテンツを焼きなおすのではなく、イズムそのものを見直すというのは、企画立案の方法論としてはまだ掘れるなと感じますね。
中西 昔のゲームのよさは単純さ、言ってしまえば、めんどくさくない良さがあると思ってます。単純ゆえにプレイヤーが何かして、その結果が出るまでが速い。わかりやすい。そのシンプルさを維持しつつ、やれることの幅を増やそうという意識はありましたね。
――このゲーム、「ダンジョンを作って勇者を倒す」と説明すると、その手のシミュレーションかと思っちゃうんですが、全然違いますよね。
中西 ですね。手触りとしてはアクションゲームのそれを目指しました。試作版を作って「単純に穴を掘るだけで気持ちいい」って言ってもらえたときは、よっしゃって思いました。
山本 いわゆるアフォーダンスってやつですよ。ブロックが敷き詰められていて、そこにつるはし型のカーソルがあれば、すなわち「掘るんだよ」ってことを示唆しているという。
――サクサク掘れるから、最初はすぐに掘パワーを使いきっちゃう。
山本 それでいて実は考えることは多いよね。実際、普段使うのは方向キーと□ボタンだけなんだけど、結果的に二つと同じダンジョンにはならない、というのがいいよね。
――そういえばゲームの難易度は、どれぐらいなのでしょうか?
中西 歯ごたえはあるほうだと思います。大雑把にやってもそこそこ進めるんですが、先へ進もうとするほど緻密さが要求されるようになっています。
山本 壁になっているステージがあって、そこで急に難しくなる。だいたいみんな最初は「これ無理!」っていう。その辺もある意味、昔のゲームっぽいですよね。
中西 調整の過程では、理不尽とか言われちゃったりもしましたが、そこは狙いたかったところなんですよね。というのも、そういうのって共有体験として残るじゃないですか? 次の日、学校で語るネタになったり、先にクリアできた人が得意げに攻略を語ったり。そういうことも含めたゲームの楽しさを作りたいっていうのはありますね。
――やはり、攻略情報必須なのでしょうか?
中西 人によるんじゃないでしょうか。ゲームの目的は勇者を倒すというただ1つなんですが、その方法はじつにいろんなやり方があるんですよ。それこそ、テストプレイでやってもらって、僕らも知らなかったやり方が見つかったりと。
山本 で、魔王が言うわけですよ。「私が教えられることはもうありません。あとはまとめwikiでも見てください」って(笑)。そんなゲーム初めてだよ。
――開発する立場からすると、ネタバレ情報がネットに流れたりするのは嫌じゃないんですか?
中西 解答がひとつのパズルやアドベンチャーみたいなものだと、それはそうでしょう。基本は自分の力で楽しんで欲しいわけですから。解答を見ながらパズル解いても面白くもなんともない。それでつまらなかったと言われてもね。ただ、いまの世の中でそれを防ぐのは無理ですし、それは大前提としてシステムを考えるしかない。さっきの話ですけど、そういうユーザー同士の横の繋がり含めてゲーム体験になっていくんだと思います。一方で、情報をシャットダウンして楽しむことを選択するユーザーもいるわけですし、とにかく消費の仕方を縛るほうが前時代的じゃないですかね。
――なるほど。おおらかというか、投げやりともとれますね。
中西 いや、だからってなにもしないわけじゃないですよ。それを大前提としてシステムを考えるというのはそういうことで、例えば、よりプレイヤー自身が成長できる部分、プレイヤーのスキルが必要なゲーム性というのは狙ってるつもりです。そういうのは逆に、むしろネットで情報が広がるからこそ生きるものだと思います。スーパープレイの動画とか見て、こんなことができるんだ!? とか。
山本 今のコンシューマーゲームシーンは、その消費スピードに対抗するために、ひたすらボリュームを積み上げる方向で伸びてきた側面があると思うんです。なので、システムとして消費されにくい仕組みってなんだろうと。このゲームは、俺はこうした、お前はどうしたとか、攻略しながら語るのが実はすごく楽しい。ゲームオーバーになってへこたれるんですが、そういう話をしてたら別の方法を思いついて、またやりたくなっちゃうという。
中西 シンプルかつ骨太というところは実現できたんじゃないかと思います。
――勇者はメディアにも販売店にも評判が良いんですよ。珍しくお店の人やらせて! やらせて! って。確実に引きはありますよね。
30代以上しかわからないネタが多いです
――さて、システムもできました。ビジュアルもできました。サウンドはどうだったんでしょうか?
山本 いい曲です! 結果的にはこれしか考えられないくらいの名曲群ですよ。
中西 忘れられない感じですよね。周りの席のみんな、他プロジェクトのスタッフもメロディーが脳裏にこびりついてます。
山本 ノイジークロークさんという、ゲーム音楽専門の会社さんにお願いしました。ニコニコ動画でも、PVの曲がいいって書き込んでくれてる人が結構いるんですよ。
中西 「龍が如く2」や「ポケモン不思議のダンジョン」や「忍道」の音楽なんかを手がけてる会社さんです。
山本 ゴージャスなオーケストラの曲調をベースにしつつ、音色をチープにしよう! っていう基本の考え方を踏襲して、現代的にできないかなぁと。ボクの上の子供が小学校の入学式のとき、現役の小学2年生がリコーダーを吹いて歓迎するというセレモニーがあったんですが、その、数十人で吹くリコーダーのユニゾンがめちゃくちゃ気持ちよくって、「これだ!」と思ったんです。
――親バカ要素も取りこんだと。
山本 当初、実際に小学生にお願いしようとしたんですが、夏休みじゃないと時間が取れないとか、教育委員会に許可を取らなきゃいけないとか諸事情あって断念しました。とはいえ、アルトリコーダーのプロはいないようだし、やはりなにかしらのチープ感は出したかったので、結局、ノイジークローク社員の皆さんに総出でやってもらうことになりました。難易度の高い楽器は音大生のヘルプも頼んで。練習はカラオケボックス、シンバルとかノイジークロークの社長の奥さんが叩いてというアットホームな収録になりました。
中西 みんな練習量が充分だったわけじゃないので、ある意味、必死さが緊張感として曲に加わって、まさにその瞬間でしか録れない音になりました。
――あとはテキストですか。 ゲーム内のテキストは何人で書いたんですか?
中西 主にストーリー系は僕で、トレーニング系は宮崎君。図鑑は半々です。あと大村君という「ゲームやろうぜ!」の合格者の方にもトレーニングを手伝ってもらってます。
――1人じゃなかったんですね! 不思議なハーモニー漂う文体ですよね。
中西 テキストはいわゆる徹夜明けのテンション、っていうか本当に徹夜明けに勢いで書いたものが多いですね。図鑑とか病的って言われました。
――でも図鑑のプロフィール見ると勇者のことが好きになりましたよ。
中西 はい。ぼくはもともとザコ敵を人間臭くしたりするのが好きで、このゲームではザコモンスターにスポットをあてるというコンセプトがあったのは話しましたよね。で、今回は、敵である勇者のほうに背後のドラマを創造させる材料を入れていったわけですが、そうすると逆に勇者に愛着がわいてくるんですよね。あ、もし次回作やるなら次は逆に「勇者がモンスターを倒すゲーム」ってどうですか? そうすると勇者のレベルが上がったり、ストーリーが進行するという新システムを入れて!
一同 おお! それは新し……くねーよ!
――このゲームってある年代でないとわからないテイストがありますが、やはりスタッフの平均年齢は高めだったんですか?
中西 いえ。実は若い人が多いプロジェクトでした。
宮崎 でもなぜか30代以上の人しかわからないようなネタが多いですよね。
中西 そうそう。さっき話したやろうぜ大村君とか20代前半なのに、なんでこんなネタ? ってのが。サバ読んでない? って。
山本 なんかね、微妙にわかるようなわかんないようなのが多いんですよ。例えば肩書き:SGGY 名前:げんぞうって勇者とか。
――SGGY?
宮崎 スーパー・グレート・ゴール・勇者ですね。
中西 いや、すごく・がんばる・ゴール・勇者です。
宮崎 ああ。もりさきくんのほうですね。
山本 わかんねーよ! だいたいゴール・勇者ってなんなの?
――「ぼくにこのてをよごせというのか」ってステージタイトルもいいですよね?
中西 はい。いえ、ほんとすみません。もちろん、業界を震撼させたあのゲームへのオマージュを込めて付けました。ぼくも当時、あのゲームにシビレたクチなんですよ。一応、魔王に呼び出されて、ダンジョンを掘らされる破壊神の心境にも掛かってるんですけどね。
――ゲームとかまったく関係ないものもありますよね。
山本 ステージタイトル、「かあさん、このあじどうかしら?」とかでしょ。あれもなあ…。
中西 いやいや。あそこの勇者、「ぶっちゃ」っていうでしょ? ディ●ブロに出てくるブッチャーていうモンスターがいて、Fresh Meeeeeat!って言いながら包丁もって追っかけてくるんですよ。ディ●ブロをプレイした人なら誰もが持ってるトラウマじゃないでしょうか。
――ゲーム文化でお約束になってるネタも結構ありますよね。
山本 「どうせ、かいせつしょよんでないんでしょ?」と魔王に怒られたり。
――他にどんなのあるんですか?
山本 まあ、元ネタ探しはお楽しみ要素でもあるのでユーザーの皆さんに見つけてもらいましょうよ。ホント、微妙なネタが満載なので、それこそまとめwikiを作ってもらいたいという…。


