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俺の屍を越えてゆけ 続編への道 「俺の屍を越えてゆけ」続編の進捗状況について、随時お伝えして参ります!

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制作日誌28: 冬の擬音祭り

2014.03.06

都内で記録的な大雪が降った翌日、僕らSCE『俺屍2』制作チームは都内某所のスタジオにおりました。
今回はちょっと珍しいノリで、楽器の収録について書いてみようと思います。

写真は前日の永嶋先輩の様子。
「この雪で、明日の収録大丈夫かなー…」と、心配そうに帰宅する先輩の後姿に無駄な哀愁を感じます。

40才目前、前厄突入。仕事にすべてを捧げる男の背中は、頼もしくもあり、切なくもあります。
誰も居ない冷え切った自宅に戻る先輩、雪よりも凍える情景が浮かび、ふと目頭が熱くなります。

先輩が心配したように、悪い予感はなんとなく当たるもので…。
翌日は雪の影響で桝田さんが収録に立ち会えないというトラブルが!

ですが、本日の主役である樹原孝之介さんをはじめ、各楽器を担当される演奏者の皆さん、
スタジオ関係者の皆さんはどうにか集合できそうな模様。
やや不安に包まれながらも三日間にわたる楽曲収録が始まりました。

さてこの楽曲収録、すでに公表しているように、『俺屍2』の音楽制作を担当しているのは樹原孝之介さん。
ご存知、初代『俺屍』の音楽を担当してくださった樹原涼子さんのご子息であり、現役の大学生でもあります。

本来、音楽担当が代わるとゲームの世界観もガラっと変わったりするものですが、
スタッフ公開前に流したトレーラーはすべて孝之介さんの作曲だったにも関わらず、
この交代劇に気づいた方はいらっしゃらないようでした。

桝田さんもこれまでのインタビューで、

「今回も音楽はキハラさんだね。それは間違ってないよ」

と、含み笑顔で語っていたのを覚えています。
ただ、メディアさんも「ああ、今回もキハラさんなんですね!」と、それ以上突っ込まないので、
発表まで誰にも気づかれずじまいでした(笑)

今回、『俺屍2』に収録されている楽曲は70曲以上。これは初代『俺屍』よりも多い楽曲数です。
リメイクとなるPSP®版でも楽曲アレンジを担当してくださった孝之介さんですが、
ひとつの作品で、これだけの数の作曲を担当するのは初めてとなります。

↑当日は、孝之介さんと一緒に、母であり師である涼子さんもスタジオにいらっしゃいました。
親子でのレコーディング指揮という、なんとも『俺屍』らしい光景が繰り広げられることに!


収録一日目

さきほども書きましたが、この日は桝田さんが雪のためスタジオに来られないというアクシデントが発生。
収録を楽しみにしていただけに残念ですが、その代わりにメールでリクエストが飛んできました。

「全体的にバランスのいい理知的な曲が多いので、とくに戦闘の曲、
なかでも導入部やサビの部分に、子供が口でまねできるレベルのわかりやすいけれんみを、
三味線や笛など、和楽器の個性的な音色を十二分に使って、追加してほしい」


音楽の素人である僕らには、わかるようでいて、これをどう音楽として形作るのか…。
すべては孝之介さんの手腕に掛かっています。

↑収録のトップバッターは津軽三味線。
全国コンクールにて5年連続で賞を獲得している本田浩平さんが担当します。
孝之介さんいわく、ゲームの中で「熱狂の赤い火」が灯った際に流れる曲は、
津軽三味線の演奏パートとしては一番難しいそうですが…。
いきなりイメージ通りに収録できたようで、思わず笑みがこぼれます。

日誌担当の素人音感と表現力の乏しさでは、正直、この三味線の軽快さと躍動感をうまく表現できません。

ぺんぺんぺんっ
ぺぺ ぺんぺんっ ♪


ちょっとだけでも伝わったでしょうか…。
擬音をクリックすると、ちゃんとした音も聞けますので、ご容赦ください。

↑続いて横笛。奏者は大野利可さん。
雪のため交通機関が乱れ、本日は3時間掛けてスタジオにお越しいただきました。
写真右、右側の2本が能管(のうかん)とそのケース、その他は全て篠笛(しのぶえ)と呼ばれるものです。
短い篠笛ほど高い音が出せ、長い篠笛ほど音が低いそうです。

もともとは屋外でお祭りの音楽を奏でる際に使用した楽器なので、想像しているよりも大きな音が出ます。

ぴーぴーぴーひゃらら
ぴーひゃら ぴ-ひゃら ぴーひゃららー ♪


陽気な祭囃子(まつりばやし)に、聞いているこちらも小躍りしたくなってきます。
さきほどの三味線の音と組み合わせると、どんな曲になるのか今から楽しみです。

↑次は、リコーダー 兼 オカリナ 兼 19世紀フルート 兼 コーラス の春日保人さん。
3月21日に「ウリッセの帰還」というオペラの主役を務める、国内で活躍中のバリトン歌手。
さらにいろいろな楽器を操られる春日さん、どれだけマルチな才能をおもちなんですか…。

オペラなどに興味がないとバリトン歌手と聞いてもピンときませんが、
いわゆる男声の、太く艶のある声は、TVやラジオなどで誰もが耳にしたことがあると思います。

さきほどまでの和楽器を演奏される方々は、
孝之介さんが用意した楽譜を、それぞれの楽器で演奏するための変換が必要なので、
事前にある程度の練習をするらしいです。
一方、洋楽器を演奏される方々は、収録当日に現場で楽譜を見て演奏されるそうです。
これを“初見で演奏する”と言うそうで、もちろん目の前の春日さんも初見で演奏されているとのこと。

それができれば、どれだけ格好良くてモテるだろうか…。と、よこしまな想像をしていたときに、

「あ、僕もオカリナならちょっとできますよ」

と永嶋先輩が自慢げにカットイン。これは初見でウソだと気づきました。

ぽーぴ ぴぴぴー ぽぴぴぴぴー♪

先輩の邪悪なウソとは対照的に、穏やかでふんわりしたオカリナの音色がスタジオを包み込みます。



収録二日目

↑二日目は再び和楽器からスタート。まずは琴の三宅礼子さん。
正式には「箏(そう)」と言うそうです。これは初耳!

箏(そう)は調弦(チューニング)が大変なので、曲の収録順番なども工夫しながら進行することに。
まずは戦闘で使用する曲から演奏をはじめました。

普段の箏(そう)で演奏する曲と比べると、とてもテンポが速いので、ちょっと大変そう。
今回使用したものは20弦。通常は13弦で、なかには25弦とかの箏(そう)もあるそうです。

テテテン テン チントンシャン ♪

三宅さんの奏でる音色が気に入った孝之介さん。その場で一曲追加のリクエストが出ることに!
曲によってわずかに表情が変わる箏(そう)は、何曲聴いても飽きない魅力があります。

なお、こんなに大きな楽器をどのように運ぶのか気になっていたところ、
あっさり分解されて、業者さんがサクッと運んでいってしまいました。これはビックリ!

ちなみに楽器で運ぶのが一番大変なのは、スタジオ内の関係者さん満場一致でハープだそうです。
大抵の楽器はバラせるそうですが、ハープはバラせないわ重いわで大変なんですって。

とにかくこれだけ和洋の楽器が揃う収録もなかなかありませんので、
収録中は常に勉強の連続でした。知らないことって本当に山ほどありますね…。

↑続きまして尺八。田辺頌山(たなべしょうざん)さんが担当してくれました。
譜面に書かれた謎の記号が気になります。人ヒ・チ・レ・チロロ・人口…?

ふォー。ふふほぉー ♪

うーん、素人的にも聞きなれた音ですが、さきほどの譜面から何が理解できるのか、まるで謎です。
すかさず孝之介さんが指示を出します。

「この曲が使われるシーンは夕方なので、夕暮れの寂しい感じを出していただけますか?」

「なるほど、やってみますね」

え、それで通じちゃうんですか?! というくらいプロ同士の謎コミュニケーション。
芸術に携わる方々の想像力に感服です。僕らは一瞬カラスの鳴き声が頭に浮かんだくらいでした。

↑二日目最後はこちらの楽器。高原聡子さんが演奏する笙(しょう)です。
しかも、演奏時の息による結露をとるための電子コンロまであります。
馴染みのない名前に独特なフォルム。でも、じつは意外なほど聞きなれた音が!

ほわーーーーぁーん ♪

そうです! お正月によく流れている、不思議と落ち着くあの音です。
神秘的で優雅な音に身体を預けると、ニヶ月前のお正月に戻った気分です。

本当に今、ニヶ月戻れたら、制作スケジュールもずいぶん楽になるんだけどなぁ…と思った瞬間、
現実に戻されましたが。



収録三日目

↑ついに迎えた最終日。これまでの収録と打って変わり、いきなり大人数での収録です。
写真一番左の吉田翔平さん率いる、吉田宇宙ストリングスの皆さんの演奏が始まります。

↑昨日までの1対1の収録から、急に大勢の弦楽器奏者に囲まれる孝之介さん。
想像できますか? 大学生の若者が、音楽担当としてデビューし…いきなりこの状態です。
断言できます。僕らなら確実にチビっています。

譜面をそのまま演奏するのではなく、作曲者の意図をくみ取って、いろいろと提案してくださる吉田さん。
孝之介さんの指示にも自然と力が入りますが、時間との戦いもあり、本日は笑顔もやや少なめの印象。

「いいねー」

↑ふと後ろを振り返ると、桝田さんが登場!
雪と仕事でなかなか現場に来られなかったのですが、最終日にようやくスタジオにご登場です。
しかも愛娘の手編みのニット帽を被っての降臨です。

疲労と緊張のピークを迎えた最終日に、桝田さんの笑顔が現場を一気に和ませてくれます。

↑いよいよラストスパート! フルート、オーボエ、クラリネットの三連星。
写真奥から斉藤和志さん、庄司知史さん、山根公男さん。写真の角度が悪く申し訳ございません。

ホーホーホーヒャラ フォーフォー ♪


↑ホルンの西條貴人さん。その牧歌的な音に、スタジオが一気に草原のような清々しさに。

ププププー ププププォーン ♪


↑大トリはアコースティックギター 兼 フィドル 兼 エレキギターの小塚泰さん

「楽器もってないとただのおっさんだ、
気づかなかったー(笑)」


小塚さんを見て、いきなり笑う桝田さん。

突然なんちゅう暴言をかますんですか、桝田さん!

と、思いきや…なんとこの小塚さん、
樹原涼子さんのライブなどでも活躍している、『俺屍』と縁の深いギタリストだったんです。

「いやぁ、彼に会うのは三回目なんだよ。このしつこい感じは何なんだろうね」

と、久しぶりの再会に嬉しそうなのに、セリフだけ見ると毒舌っぽくなるのが桝田節。
そんな桝田節を楽しそうに聞いている小塚さん…僕たち同様、桝田さんに慣れてらっしゃいますね(笑)

そんな小塚さん、ひとたびギターをもつと…。

ぎゅいーーーーーーーーーーん!



か…カッコいい! いきなりオーラ全開です!

「だろー? 器用で面白いおっさんなんだよ」


いやそれ他人事のように言ってますが…桝田さんもそんな感じですよ(笑)






駆け足で紹介した今回の収録現場ですが、いかがだったでしょうか?
『俺屍2』の楽曲制作のために力を貸してくれた皆様、本当に有難うございました。
その誰もが素晴らしい才能の持ち主であり、
プロフェッショナルとは何かということを、改めて勉強させていただきました。

不思議なもので、才能があって面白い人の周りには、新たな面白い人たちがどんどん集まってくるんです。
そういうケースを制作現場では何度も見てきましたが、今回の収録もまさにそれでした。

そんな怒涛のように過ぎ去った三日間。合計30時間に及ぶ収録で、最もその才能を輝かせていたのは、
間違いなく樹原孝之介さんだったと思います。

また今回、日誌ではほとんど書きませんでしたが、
終日にわたり孝之介さんをずっと支えていた母親の涼子さんの、その存在感ときたら…もう!
初代音楽担当と、二代目音楽担当が一緒に仕事をしていること自体が
『俺屍』の歴史そのものでした。

いつか時間ができたら、日誌でも樹原親子のお二人を取材したいと思っていますので、
そのときを楽しみにしていてください。

↑孝之介さんを中心に収録後の記念撮影。
左から孝之介さんのお父様である遼元(リョウゲン)さん、お母様の涼子さん、レコーディングエンジニアの岡部さん。
※岡部さんは『リンダキューブ』や初代『俺屍』からレコーディングを担当してくれています。

大先輩たちの支えと、そんな彼らの前で大きな仕事をやってのけた孝之介さんの笑顔。
この写真を撮ったとき、『俺屍』の世代交代というテーマと重なって、思わず涙がこぼれてしまいました。

スタジオに入った瞬間、遼元さんは音楽プロデューサーとして。
涼子さんは監修する作曲家として。
孝之介さんは『俺屍2』の音楽担当として。
収録が終わるまで、そこに家族の表情は一切ありませんでした。

それがまた、カッコいいじゃありませんか!

大変だったけど、素晴らしかった三日間。
桝田さんと永嶋先輩と一緒の帰り道で、今回の日誌について、どう書こうか話したところ…。

「いや、とても良いネタになると思うけど…日誌くんが音の表現とか、そもそも無理でしょ(笑)」

と、笑われたので、悔しくて頑張って書いてみたものの、
稚拙な擬音で音楽の魅力をお伝えするのは到底無理でした…。

あまりの表現力のなさに軽く凹んでいた、そんな時。
取材写真から、とんでもないものを発見してしまいました。

↑孝之介さんの使っていた楽譜に書かれていた、プロの擬音がこれです!

…ちょっと自信がつきました(笑)





冗談さておき、せっかくですから、
ここで、現在制作中の音楽をほんの少しだけお聞きいただこうと思います。

それではどうぞ!
曲は「夜鳥子(ヌエコ)のテーマ」です。

ゲーム内のシステムと同様に、『俺屍2』の音楽もかなり面白い表現に挑戦していますので、
楽しみにしていてください!

次回は体験会の模様をお伝えする予定です。
考えてみれば、もう春でしたね。夏に向けてよろしくお願いします。

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