【E3 2016】小島秀夫監督『DEATH STRANDING』最新インタビュー! "STRAND=つながり"が意味するもの

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【E3 2016】小島秀夫監督『DEATH STRANDING』最新インタビュー! "STRAND=つながり"が意味するもの

「E3 2016 PlayStation® Press Conference」で、小島秀夫監督によるPlayStation®4用ソフトウェア最新作『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』のティザー映像が初公開された。

海岸に横たわる裸の男。砂の上を移動する黒い手形。へその緒のような黒いコードでつながれた幼児を抱きしめる男が、立ち上がり見つめる先には、同じようにつながれたイルカやクジラの死骸。そして空に浮かぶ5つの影ーー。

小島監督は今回のインタビューで、謎に満ちた映像の秘密の一端に触れている。
ぜひこの映像をご覧のうえで、現地での最新インタビューをお楽しみください。

インディーズでもハイエンドのゲームを作れることを証明したい

──「E3 2016 PlayStation® Press Conference」では、新作『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の紹介に伴い、ステージに立たれました。観客からは大歓声を受けましたが、感想をお聞かせください。

去年は参加できなかったため、2年ぶりの「E3」でした。「E3」にはアトランタで開催していた1997年から来ていますし、僕にとっては重要なショウ。ステージでプレゼンテーションをし、みなさんと交流する、大好きで大切なイベントです。

2年ぶりの参加ですが、10年ぶりぐらいの感覚でした。すでに戻ってきているので『ターミネーター』のように「I’ll be back」とは言えませんでしたが、「I’m back」と事後報告させていただきました(笑)。非常に温かい拍手をいただき、「『E3』に還ってきたんだ」と実感しました。

僕は今年53歳になりますが、この先もずっとゲームを作りたいと思っています。一般的にはそろそろ定年を迎える頃ですが、僕は死ぬまで作りたい。今回2ヵ月半でティザー映像を制作、発表し、みなさんの賛同を得られたので「選択は間違っていなかった、この年齢でもまだ頑張れる、まだ死ねない」と決意を新たにしました。

──ティザー映像の制作期間は、わずか2ヵ月半だったのですね。

会社を立ち上げるには、建物、人、技術が必要です。でも当初は、僕がいるだけで何もない状態でした。とはいえ、今やテクノロジーは世界中にたくさんあふれています。そこで新作で使用するエンジンの候補を探しました。

その際、見つけたのがサンディエゴのスタジオです。設備がよく、使ってみたいと思いました。会社を立ち上げ、企画、人材募集をしながら、今年2月末にノーマン・リーダス(Norman Reedus/俳優・画家・モデル。主な出演作は『ウォーキング・デッド』『処刑人』『ブレイド2』など)と再会。実質的には2ヵ月もかけず、タイトルからデザインまですべて自分たちで作りました。仮事務所で作ったインディーズタイトルですが(笑)。

今は昔と違い、インディーズでもテクノロジーを使うことができます。高価な機材を使わなくても、パソコンで編集できる時代です。世界中にテクノロジーとツールとサービスがあるので、インディーズでもその気になれば世界に向けてハイエンドのゲームを作れる。それを証明したかったのです。

世界観、物語、ゲーム性… すべてのテーマは”STRAND=つながり”

──『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』というタイトルの意味をお聞かせください。

イルカやクジラ、アシカなどが大量に座礁することを「DEATH STRANDING」と言います。多くの生物が座礁することを「MASS STRANDING」、死んだ状態で座礁することを「DEATH STRANDING」、生きている状態で座礁すること「LIVE STRANDING」と言うのだそうです。

──ティザー映像には、へその緒のようなものでつながれた幼児が描かれていました。あれは「LIVE STRANDING」を表わしているのでしょうか。

少し違います。ある世界から何かが座礁してくる。「I’ll keep coming」という歌詞のとおり、何度も来る。それを暗示しているタイトルです。「STRAND」はもともとビーチという意味ですが、心理学用語では絆、鎖を意味する「より糸」を表わします。カイル・クーパーさん(Kyle Cooper/グラフィックデザイナー・映像作家)が手がけたタイトルロゴも、血ではなくつながりを表わしているんです。蟹やクジラにもコードがつながっていますし、ノーマンと子どもも臍帯でつながれていますよね。世界観、物語、ゲーム性、すべて「つながり」、つまり「STRAND」がテーマです。

僕は安部公房のファンで、高校時代に『なわ』という短編小説を読みました。作中では、人類が最初に発明した道具が棒であると定義づけられています。棒は悪しきもの、自分に敵対するものを遠ざけるために発明した道具、つまり武器です。そして、その次に発明したのが縄。棒とは逆の発想で、自分が繋ぎとめたいものを引きつけて、縛る道具です。棒と縄という道具は今でも人類が使っている、そういう定義がなされていました。

考えてみると、ゲームはオンラインであれマルチプレイであれ、ユーザーが使っているのは棒です。要するに、殴ることでコミュニケーションが生まれています。『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)は、その次に行こうとするゲームです。当然棒も出てきますが、ゲームをプレイしながら縄的な思考でつながる話です。ストーリー、世界観はもちろん、ユーザー同士、あるいはゲーム実況者などすべてが「つながる」。その実験にいま取り組んでいます。

ノーマン・リーダスを起用したのも「つながり」です。彼とは『P.T.』制作時に親しくなりました。あのような結果になり、彼もファンも悲しみましたし、僕もつらい時期にはノーマンに相談に乗ってもらいました。そこで2月頃、ノーマンに今回の企画を持ちかけところ、すぐに快諾してくれました。その後まもなく、2月末に撮影。信頼関係があるからできたことです。カイル・クーパーさんとも17年来の仲ですし、SIEとは20年来のつきあい。開発に関わる方々とも「STRAND」しています。

まず新しいゲーム性ありき。ジャンルはその後についてくる

──今回はアクションゲームとのことですが、ジャンルについてお聞かせいただけますか?

僕は、ジャンルを問うべきではないと思っています。マーケティング的にはジャンルを明示しなければなりませんが。このゲームでは、ノーマンを操作します。ボタンを押してノーマンが飛ぶなら、それはアクションです。そういう意味ではアクションゲームと言えます。たとえばFPSやシューターもアクションゲームですよね?

ゲームを車にたとえてみましょう。車は、どれも同じような作りです。扉を開けて乗り込み、エンジンをかける。ハンドルを握ってアクセルを踏む。これらの動きは改めて教える必要もなく、どの車でも同じです。こうした運転手に、僕らは車を与えるわけです。

でも、彼らもおかしな車には乗りません。『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』も、けっして尖ったゲームではないんです。ユーザーが「面白い車はないかな」と探していたら、ちょっと目を引くものが置いてある。車に乗り込み、エンジンをかけて発進するまでは、確かに他の車と同じです。でもノーマンを動かしていくと、違う風景が見えてくる。もう少し進むと、縄的な喜びが待っている。他とは違うゲーム性を味わえるのです。

たとえば『メタルギア』は、スネークをコントロールするアクションゲームでした。当時は銃を撃つゲームばかりでしたが、『メタルギア』は隠れて進むゲーム。あのスタイルが定番になったから「ステルス」というジャンルが生まれました。このゲームも同じです。ノーマンを動かすのですからアクションゲームではありますが、その先にあるのはいまだ名前のないジャンル。その名称は、みなさんが考えていただければいいと思います。

新しいジャンルではなく、新しいゲーム性を追求しようとしています。それがどういうものになるかは、これからわかっていくでしょう。

ゼロからの出発でも不安はない。30年間の経験からくる自信と覚悟

──『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』のゲーム性は、以前から考えていたものでしょうか。

チャレンジしたいことはたくさんありますし、作りたいゲームのアイデアは毎日のように生まれてきます。まあ、すぐに忘れてしまうのですが(笑)。

昨年12月にコジマプロダクションを立ち上げ、6畳に満たない仮事務所で何をしようかと考えていました。いろいろな候補がありましたが、みなさんが期待しているのはストーリーもゲームプレイも豪華で、願わくば以前のゲームを超えるものです。さまざまな候補の中で、どれを作りたいのか、どれなら作れそうかを考えた結果が『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』でした。「これを作ったら、みんなが驚いてくれるかな」という思いもありました。

どのようなゲームを作るのか、選択肢はたくさんあります。簡単なゲームなら短期間で作れるかもしれない。でも、ゲームユーザーやSIEが期待するのは、ボリュームもクオリティも高い水準を満たしたものです。それに、僕らがインディーズでもここまでできると証明すれば、日本の若いクリエイターも頑張ってくれると思うんです。ですから、最初からハイエンドのゲームに挑みました。

みなさんからは「ゼロからの立ち上げですが、大作にチャレンジして大丈夫ですか?」と聞かれます。でも、テクノロジーは世界中にあり、自分たちがイチから作る必要はありません。協力してくださる方もいます。なにより、僕には30年間ゲームを作り続けてきた経験があります。突然「フレンチレストランのシェフになれ」と言われたら怖気づきますが、ゲーム制作は30年間続けてきたこと。しかも毎回のようにハードが違えば、チームだって違います。その都度、最適なテクノロジーを精査、選択して制作に臨んできました。ですから、今回も不安はまったくありません。とはいえ、同じことを繰り返しても面白くないので、チャレンジャブルなことを入れています。絶対に成功したいですし、成功すると思っています。

──制作を通じ、若いクリエイターを育てたいという思いもあるのでしょうか。

育てようなどという大仰なことは考えていません。僕は映画を観て育った世代。映画を通じて世界を知り、ストーリーや描かれる人物に感銘を受けてきました。その先には「こんな素晴らしいものを作ったのはどんな人だろう」という、クリエイターへの興味も湧きました。その職業を知れば、ものづくりへの意欲も高まります。

ゲームも同じことです。若いユーザーに「楽しい」「面白い」と思ってもらえるのは最低条件。そのもうひとつ先に、「こういう仕事があるのか」「自分もチャレンジしたい」「あの人が頑張っているなら、俺も挑戦しよう」というつながりがあります。今はこうしたつながりが失われつつあるので、他の人がやらないなら僕がやろう、と。でも、育てようとは思いません。「かかってこい」と思っています。「若者たち、かかってこい」、とね。

──現在、制作にはどのくらいの方が携わっているのでしょうか。

スタッフは増えつつあります。ただ、100人以上にはしたくありません。過去の経験では、スタッフが200人に達すると顔と名前が一致しなくなりました。できるだけ少数で、クオリティの高いものを作りたいと思っています。

現時点で集まってくれたメンバーは、昨年12月にWebから応募してくれた人たち。ほとんどが外国の方でした。当時は何を作っているかもわからない状況でしたが、「それでも一緒に作りたい」という方々でした。今回ようやくタイトルを発表できたので、今まで躊躇していた方も応募していただけるのではないかと思います。

──現在の開発状況についてお聞かせください。

今は、ゲームエンジンの実験をしている最中です。エンジンにはそれぞれ特性があり、できることとできないことがあります。その中から、候補をふたつに絞りました。ひとつは、僕らが目指すビジュアルを表現するためのエンジン。ティザー映像もこのエンジンで作っています。もうひとつは新しいゲーム性を精査するためのもの。新しいゲーム性ですから、実際に作ってみたら面白くなかった……という可能性もあります。そうならないよう、実験を行なっています。まもなく結果が出るので、そこからが本格的な開発のスタートです。

──いつまでも制作を続けられるモチベーションは、どこから湧いてくるのでしょうか。

ファンの方々の存在です。「E3」会場でも、多くの方々から声をかけていただきました。性別も年齢も異なるさまざまな方々が、僕のゲームを待っているという状況はすごくうれしい。

楽しみに待っている方がいる限り、僕も死ねませんし制作に打ち込みたい。それが使命だと改めて痛感しています。


インタビューでも語られているように、E3は小島監督にとって特別な意味を持つイベントであり、E3にとっても小島作品の革新性は、進化し続けるゲームという新しいエンタテインメントの象徴として特別な存在であった。

欧米のゲームメーカーに対して、ひとりのゲームクリエイターとして稀有な作家性とほとばしる情熱をもって戦いを挑み続け、高い評価と賛辞を獲得してきた小島監督を、今年のE3に集まった世界中のメディアは歓喜の拍手で迎えた。世界中のゲームファンを熱狂させてきた稀代のクリエイターの凱旋に、これほどふさわしい舞台はなかっただろう。

ティザー映像を観てふと思い出した映画がある。冬のスコットランドを舞台にしたスカーレット・ヨハンソン主演作『アンダー・ザ・スキン 種の捕食/Under the Skin』である。ミュージックビデオ出身のジョナサン・グレイザー監督による退廃的な映像美が話題になった、小島監督自身も好きな映画のひとつに挙げている作品だ。

荒涼とした海、ひたすらダークな色彩、時間を止めるかのような音楽、黒のモチーフ……それらの交錯するイメージ以上に心深くシンクロしてくるのは、異生命体へのまなざしである。命はどこからやってきて、どこに行くのか。

この映画では、異生命体であるヒロインの地球での捕食が唐突な結末を迎え、それ以上多くを語られることはないが、われわれと異なる生命体を考えることは、人類の生命の根源と尊厳を探ることでもある。

幼児を抱きかかえ慟哭するノーマン。彼の悲痛な叫びはどこに向かっているのか。
それぞれの生命体はどこにつながっているのか。
“STRANDING”が本当に意味するものは何なのか。
流れるLow Roarの歌声に乗せて、繰り返し呪文のように語られる言葉──”それでも還ってくる”。
無限、一瞬、永遠、無垢、予兆、目覚め……散りばめられた言葉の断片は、まだそこにたたずむだけ。
ここから命が吹き込まれ、物語が紡がれていく。

これまでの作品よりも、より内省的、根源的なテーマに挑もうとしているかのような小島監督の手によって生み出される『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』では、いったい何が語られていくのだろうか。
小島監督は還ってきた。物語はまだ始まったばかり。

“お楽しみはこれからだ”

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DEATH STRANDING(デス・ストランディング)

開発元:株式会社コジマプロダクション
発売元:株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
対応機種:PlayStation®4
発売日:未定
価格:未定
CERO:審査予定

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