【PS VR】テーマは「受胎と誕生」「シンギュラリティ」──『Rez Infinite』インタビュー3<ビジュアル>

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【PS VR】テーマは「受胎と誕生」「シンギュラリティ」──『Rez Infinite』インタビュー3<ビジュアル>

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全3回でお届けしてきたPlayStation®VR対応のPlayStation®4用ソフトウェア『Rez Infinite』スタッフインタビュー最終回は、「ビジュアル」がテーマ。

すべてがパーティクルで構成されたArea Xはどのように生まれたか? 本作のアートディレクターを務めたレゾネアの石原孝士氏と、開発会社Monstarsの代表取締役であり、本作のディベロップメントディレクター兼テクニカルスーパーパイザー小寺攻氏、テクニカルディレクター内田貴規氏、シナスタジア&3Dアーティスト浅地義太氏にお話をうかがった。

前回までの記事はこちら

◆世界が絶賛する共感覚体験の秘密に迫る──『Rez Infinite』インタビュー1<ゲームシステム>

◆サウンドとビジュアルの相互作用と融合──『Rez Infinite』インタビュー2<サウンド/振動>

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『Rez』との出会いがすべてのはじまり

石原:ゲーム開発の仕事を目指したきっかけは、高校生時代に出会った『Rez』にあります。世紀末と言われた90年代当時は、SFの小説や映画、ゲームなどがたくさん生まれていました。その中で、音と映像をインタラクティブに強く体感出来たのは『Rez』だけでした。ゲームとして繰り返し楽しめる点にも強く惹かれました。

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そんな『Rez』を作った水口さんに憧れ、セガ(当時)に入社しましたが、水口さんは独立のため退社してしまい、入れ違いになってしまいました。だからといってセガに入社してすぐに辞めるわけにもいきません。ゲーム開発にはとても興味があったので、3年間開発の現場で腕を磨いてから水口さんの会社に入りました。世界で一番の水口さんの追っかけだったかもしれませんね(笑)。

ようやく会えた水口さんは、想像していたとおりの方でした。水口さんはプロデューサーでしたが、アーティストという印象も持っていました、映像や音楽の話をとことん語り合えるのでクリエイティブなアイデアを生み出しやすかったです。『Child of Eden』では2,000枚のアートを描くことができ、その時にMonstarsの小寺さんともお会いしました。

石原孝士
(レゾネア アートディレクター)
水口哲也氏によるArea Xのイメージをコンセプトアートとして描き、ビジュアル面全般のディレクションを担当。高校生時代に出会ったオリジナル『Rez』に感銘を受け、その制作者である水口氏を追ってゲーム業界を目指した経歴を持つ。

パーティクルで構成された表現豊かな世界

石原:今回のArea Xのコンセプトアートは私が担当しました。「受胎と誕生」「シンギュラリティ」という2つのテーマがありますが、「シンギュラリティ」(2045年、CPUやAIが人間の能力を超えると言われている技術的特異点)のイメージをとくに膨らませながらコンセプトアートを作っていきました。

もちろん、オリジナル『Rez』の世界もバックボーンになっています。『Rez』はコンピュータ世界に入るというものだったので、その進化系を意識しました。

パーティクルで構成された世界は、水口さんのイメージによるものです。より共感覚性の強いものをどうやって表現するかを考えたとき、パーティクルで構成された世界は表現が豊かになり、感情的で壮大なものが描けるのではないかというアイデアでした。

小寺:コンセプトアートは、僕たちのビジュアル作りのベースになるものです。続編や新作の場合、それまでと同じような画ではダメですが、『Rez』や『Child of Eden』の流れを汲んだパーティクルの世界というものは、PS4®で新しく表現するには合っていると思いました。

小寺攻
(Monstars代表取締役・本作のディベロップメントディレクター兼テクニカルスーパーパイザー)
オリジナル『Rez』でプログラマーを務め、『ルミネス』(PSP®「プレイステーション・ポータブル」用ソフトウェア。2004年発売)ではゲームデザインとメインプログラムを、『Child of Eden』(PlayStation®3用ソフトウェア。2011年発売)でテクニカルディレクターを務める。

内田:初めて見せてもらったとき、この世界を作ってみたいと思いました。とてもやりがいのありそうなアートという印象でしたね。

内田貴規
(Monstarsチーフテクニカルオフィサー・本作のテクニカルディレクター)
『Child of Eden』でもプログラマーを務め、本作の「Area X」をプログラムする。小寺氏とともに開発全体を統括。

浅地:シナスタジアを表現しやすそうな印象を受けました。開発が始まってから技術的な部分で苦労することはありましたが、想像力をかき立てるような作りができると思いました。

浅地義太
(Monstarsアートディレクター・本作のシナスタジア&3Dアーティスト)
水口氏曰く「シナスタジアの表現に欠かせない人物」。3D表現のほか、振動デザインも担当。

石原:コンセプトアートは全部で200枚くらい描きましたが、小寺さんたちにお見せしたのは100枚ほど描いてテーマが決まった手応えをつかんでからです。そこに至るまで、水口さんと一緒に2年ほどかけて積み上げてきて、キーになるビジュアルがようやく完成しました。パーティクルの表現やカラーを含めて、「これだ」というものが見えてきました。

ちなみに、当初はVRありきではない状態でアート制作をしていました。後にVR対応タイトルだと聞かされましたが、それまで進めていたもので自然と活かせると思いました。むしろ、バッチリ合うと思ったので、慌てるようなこともありませんでした。

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キーテーマの完成、拡張させていったビジュアルイメージ

石原:キーになるテーマが完成するまでに時間がかかりましたが、そこからは早いですね。エネミーなどのキャラクターも、次々とできました。ただ、あくまでゲームとして楽しめなければならないので、ゲームプレイのアイデアに沿ったデザインを起こしていきました。例えば巨大なスネークは、生き生きとしているところが見える構図や空間の広さ、色使いを新たに描き起こしています。

私はアート部分全般、実装後のディレクションも携わっているので、小寺さんたちの意見をもらいながらビジュアルイメージを拡張、調整していきました。

小寺:石原くんとのやりとりは、VRになったときの色味など、出来栄えを見てジャッジしてもらうほかに、開発中もいろいろなアイデアを出してもらいました。

浅地:開発終盤のギリギリまでやっていました。「ここはこうした方がいいと思うんですけど、時間ないですかね?」みたいに、どんどん言ってくるんですよ(笑)。

石原:ステージとステージをつなぐトランジションの演出は、空間ができあがってからでないとイメージしづらいんです。パーティクルを光らせてみるとか、空間に穴を空けてみるとか、作っていく過程で新しいアイデアが生まれてきました。開発が大変なのはわかっていますが、より良いものにするには思いついたことをどんどん言っていかないと……。

浅地:まあ、こちらからもたくさん相談しましたから。エネミーは石原くんのデザインに沿ってモデリングして、そこから意見を出し合いながら調整します。クラゲのようなエネミーの「ワーム」も、最初は細めにシェイプされたデザインが提示されましたが、ゲームプレイ的にもっと太めにした方がいいということで現在のフォルムになりました。

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粒子の中をすり抜ける独自の表現技法

浅地:「ゲームシステム」の回でもお話ししたように、当初使っていたミドルウェアではパーティクルの量を出せず、石原くんのコンセプトアートを再現できそうにありませんでした。これを解決できたのは、Monstarsの社内ツールをUnreal Engine 4につなぎこんで利用するという小寺のアイデアです。

石原:パーティクルの量が足りないと、世界観がまるで変わってしまいます。私としては、なんとかがんばって実現してほしいと願うしかありません。

内田:ミドルウェアでも絶対に不可能というわけではないのですが、思いどおりに動かせないことが問題でした。とくに、背景となるパーティクルの中をすり抜けるような表現は、社内ツールなしに実現できません。遠近感をきちんと表現しながら、パーティクルの中を飛び回る。これはArea Xの技術的な特徴と言えると思います。

小寺:いつも意識していることですが、普通のゲームで見たこともない、すごいものを作らなければならないという思いがありますから。チャレンジングな取り組みは、やはり楽しいですね。

『Rez』と共通の記号として表現されたプレイヤーキャラクター

石原:プレイヤーキャラクターのデザインは、オリジナル版の見た目を引き継いでいます。Area Xではゲームルールや世界観が大きく変わっているので、『Rez』と共通の記号を使った方がいいと思ったからです。

オリジナル版のように、パワーアップに伴うダイナミックな変化はありませんが、一度粒子が拡散して再びキャラクターを形成するという、シチュエーションに合わせた表現になっていますね。

浅地:キャラクターが大きく変化するパターンも、いくつかテストしました。ただ、VRでプレイしたときに、その変化がプレイ感覚の邪魔になるという意見が多く、今の状態に落ち着きました。

石原:プレイヤーの没入感を阻害しないように、主張しすぎない上品なアバターを目指しました。実際にはパワーアップするたびに、少しずつ色鮮やかに変化しているのですが、プレイヤーはあまり気づかないと思いますし、あえてそこを狙っています。パワーアップのSEはオリジナルと同じなので、変化していること自体は無意識に感じられると思います。

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VRを体験していない方こそ『Rez Infinite』に触れてほしい

石原:『Rez』はクールなサイバー空間が舞台なので、いい意味で冷たい印象があったと思います。今回は、そこにエモーショナルな要素を混ぜたつもりです。中盤から終盤にかけて色や動きがよりオーガニックになっていくので、そこを感じ取ってもらえたらうれしいですね。

また、「祝祭」のイメージというものも音と光で表現して、とくにボス戦では強く盛り込まれていると思います。そもそも水口さんの作品にはそうしたイメージが必ず入ってくるので、今回もうまく表現したかったところです。

きっと今後も、水口さんと一緒にさらなる共感覚を追求していくことになると思います。

小寺:以前、オリジナル『Rez』をプレイした方や、『Rez』がどんなゲームかなんとなく知っている方でも、VRでプレイするとまったく違う感覚を体験できます。まだVRに触れていない方はとくに、『Rez Infinite』の世界でVRの楽しさを味わってほしいです。

石原:リアル系やホラー系、恋愛系など、VRではいろいろなスタイルのゲームがありますが、今回それらとはまったく別のアプローチで新しい体験を作ることができました。まだ体験していない方は、新ジャンルのゲームに触れるつもりで、ぜひ遊んでください!

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Rez Infinite

・発売元:エンハンス・ゲームズ (Enhance Games)
・フォーマット:PlayStation®4
・ジャンル:共感覚シューティング
・配信日:好評配信中
・価格:ダウンロード版 販売価格 3,400円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:A(全年齢対象)

※PlayStation®VR対応

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『Rez Infinite』公式サイトはこちら

© 2016 Enhance Games
© 2001 SEGA

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