開発に入り込んでのローカライズを実施! そのキーマンに『ウィッチャー3』の本気度を聞く!【特集第4回/電撃PS】

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開発に入り込んでのローカライズを実施! そのキーマンに『ウィッチャー3』の本気度を聞く!【特集第4回/電撃PS】

『ウィッチャー3』は、同シリーズではじめて日本語フルローカライズが実施された作品。総勢50名以上のキャストにより、主要人物のセリフはもちろんのこと、街の喧騒や、吟遊詩人の歌声に至るまであますところなく日本語の吹き替えがなされている。今回は、そんな気合いの入ったローカライズを指揮したプロデューサーの本間氏に、制作にまつわるお話をうかがった。

株式会社スパイク・チュンソフト『ウィッチャー3 ワイルドハント』ローカライズプロデューサー
本間 覚 氏

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前回までの記事はこちら

全世界で200以上のアワードを獲得した次世代のRPG『ウィッチャー3 ワイルドハント』がいよいよ発売!!【特集第1回】

『ウィッチャー3』がPS4™で描き出す広大無辺のオープンワールドに注目!【特集第2回】

圧倒的な自由度を誇る『ウィッチャー3』! やり込みがい十分な戦闘や育成の魅力とは!?【特集第3回】

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ゲーム制作と同時期に進行した『ウィッチャー3』のローカライズ

ローカライズの作業そのものがスタートしたのは、2013年末からでした。
スパイク・チュンソフトが販売する洋ゲーにおいては、海外版から遅れて日本版を発売することがほとんどでした。しかし本作は海外版とほぼ変わらないスケジュールで発売する予定で進行していたため、本作の開発会社CD PROJEKT REDのあるポーランドに赴き、ゲームの制作と同時進行する形でローカライズを行っています。

ポーランドでの作業はテスターとともに実施しましたが……まぁハードでしたね。出勤するたびにバージョンが変わっていてセーブデータの互換がなくなって最初からプレイし直し……ということも多々ありました(笑)。

そんななか、最初に手をつけたのはメインクエストでした。規模が大きいゲームですが、本筋そのものは早い段階で決まっていたので、テキストの完成が早かったのが理由です。

サイドクエストに関しては本当に紆余曲折がありました。小さいサイドクエストの変更に関する情報は、どうしても自分たちに届くまで時間差がありまして、最初に聞いていたのと実際にプレイをしたときとで会話の内容が異なっていることも多かったです。

とはいえ整合性がローカライズのキモなので、そこは細心の注意を払って乗り切りました。

豪華声優陣たちによる熱演にも注目

今回、多くの声優の方に参加していただきましたが、キャラクター別で見ると、最も難しかったのはやはり何万というセリフが存在する主人公・ゲラルトですね。

そもそもウィッチャーというのは怪物に対抗するために薬品や修行で身体を変異させるのですが、その多くは、変異した段階で感情が著しく抑制されてしまうんです。もちろんゲラルトも、ウィッチャーのなかでは比較的感情豊かとはいえ例外ではなく、基本的に泰然自若な性格です。

ただ日本語で演技をするとどうしても感情豊かに聞こえすぎてしまうので、できるだけ感情を出さずに、内に秘めたものをどう表現するか……というバランスには、かなり注意を払いました。

このあたりのせめぎ合いは、ゲラルト役の声優である山路和弘さんが見事に演じてくれていますので、本作の大きな見どころ(聞きどころ?)にもなっています。

もちろん、シリ役の沢城みゆきさんや、イェネファー役の田中敦子さんなど脇を固める声優さんの熱演もあって、ドラマパートの完成度も非常に高いです。ぜひご期待ください。

<メインキャラクターCV>

・山路 和弘 (ゲラルト)
・沢城 みゆき (シリ)
・田中 敦子 (イェネファー)
・土師 孝也 (エムヒル皇帝)
・秋元 羊介 (エレディン)
・あいざわ ゆりか (トリス)
・小形 満 (ヴェセミル)

音声収録は2014年の夏ぐらいから始まりました。

通常のローカライズですと、まず英語の音声が先にあり、その感情表現などを参考に声優さんに演じてもらう、という流れで収録していくのですが、今回はスケジュール的にそれでは間に合わない場合も多々あったので、私がテキストをチェックしつつ、「ここは喜びの感情多めで」「このシーンはこういう話の展開があって」などと逐次指示を出しながらの収録となりました。

ただもちろん英語の音声(やポーランド語の音声)が手元にあったほうが、より精度の高い音声を収録できるので、発売日を遅らせる覚悟でよりクオリティの高い日本語音声を収録するか、全世界同時発売を優先するか、というバランスのせめぎ合いを、日本語のみならずあらゆる言語の担当者が経験していたと思います。

そんな流れで作業を行うため、2014年の夏は会社よりも収録スタジオが本拠地となっていましたね。

海外版との表現の違いは?

ゴアや性表現などの規制に関しては、日本の家庭用ゲーム機で販売するにあたって、審査機関が定める絶対に越えてはいけないラインがあります。そのラインにどこまで近づけるというのが、我々ローカライズ担当者の腕の見せどころとなります。

たとえば強烈なゴアの描写が含まれるイベントがあった場合、そのイベントをまるまる削除する、というのがもっとも簡単な解決方法かもしれませんが、カメラワークやテクスチャの変更を経て、イベント削除を免れる場合もあります。

この点、『ウィッチャー3』に関しては、私のほうでどうにか原作の味を残すように創意工夫していますし、開発会社のCD PROJEKT REDも、こちらからのリクエストに対して最大限に協力してくれました。

弊社は基本的に”担当者の好きなタイトルをローカライズできる”会社です。自分が好きな作品に対しては、妥協なく時間を費やすことができます。

月並みな言葉ですが、そこで生じる”タイトルへの愛”が、ローカライズや規制具合に大きく影響してくると考えています。

“世界で最初にクリアした男”が語る、本作ならではのローカライズの苦労

本作の最大の特徴は、やはり、”イベント展開の膨大さ”の一言に尽きると思います。この分岐がめぐりめぐって別のイベントのフラグになっていることが多く、それを正確に把握しておかないと、翻訳もうまくできませんし、声優さんにもキチンと演技を指示できません。

そのため、ポーランドでゲームをプレイした際は、こうしたクエストの流れや結末、どういったパターンが用意されているかを把握することに意識を割きました。

本作は序盤にシリの情報を集めるにあたり、難易度の異なる3つのエリアを順に攻略していくことになります。多くのプレイヤーは難度の低いエリアから進めるかと思いますが、多少無理すれば難度の高いエリアから進めることも可能な作りになっているんです。

この場合、発生するイベントや会話の流れが変わってくるので、このあたりのゲームプレイも苦労した点のひとつですね。

かなり骨が折れましたが……その結果か、世界で最初に”『ウィッチャー3』を全編通してクリアした人間”となれました。誰かがとっくにクリアしているだろうと思っていたのですが、現地の開発スタッフは各々の担当箇所に注力していたため、私のように、全体を把握する必要があって最初から最後まで早期にプレイしていた人は意外と少なかったんですね。

開発スタッフにポロリと「クリアした」と言ったら「早い!」と驚かれまして……急遽、”世界で最初に『ウィッチャー3』をクリアした男”と書かれたこのTシャツをプレゼントしていただきました。

いろいろ大変でしたけど、これをもらったときは疲れがフッ飛びましたよ(笑)。

物語が集約していくさまは見事の一言!
シリーズ初プレイの人にもオススメの作品です

本作のストーリーは、本当によく作られています。ゲラルトの身近な人たちの話を中心にストーリーが展開していくのですが、それぞれのエリアで展開する話や、そこでプレイヤーが下す決断のひとつひとつは規模の小さいものなのですが、それらがやがて集約され、大きな物語の流れに繋がっていくさまは、見事の一言です。

オープンワールドというストーリー性を表現しにくい舞台で、ここまで美しく収まる物語を体験できるタイトルは、ゲームの歴史を振り返ってみても、本当に貴重なのではないかと思います。

シリーズものなので足踏みする方もいると思いますが、本作はスタンドアローン作品として作られているので、そこはご心配にはおよびません。もし世界観や歴史が気になったら、『ウィッチャー3 ワイルドハント』公式サイトに情報をまとめているので、ぜひ一読してもらいたいですね。『ウィッチャー』の奥深い世界観をもっと楽しめると思います。

発売当初から配信される無料DLCを含め、今後もDLCが続々登場するほか、決定ボタンを×でなく○にするなど日本に合わせたキーコンフィグもパッチで配信されます。オープンワールド、RPG、アクション、どれかが好きな人なら絶対に楽しめる作品になっていますので、ぜひ多くの方に遊んでいただき、感動を味わっていただければ幸いです。

ローカライズに関しては、前述のとおり、海外と同時発売という条件のもと、可能な限りクオリティの向上に苦労を重ねました。日本語吹き替え版はポーランドの開発スタッフにも非常に好評でしたので、唇の動きとセリフのマッチや、掛け合いの妙味など含めてぜひ楽しんでいただきたいですね。

次回はついに発売当日! これまでに判明した魅力をまとめしつつ、実際にプレイした体感をもとに各要素を紹介していきます。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』公式サイトはこちら

The Witcher® is a trademark of CD Projekt S.A. The Witcher game © CD Projekt S.A. All rights reserved. The Witcher game is based on a novel by Andrzej Sapkowski. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.

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