『FEZ』は、平面(2次元)のステージを回転させることで、立体的(3次元)にさまざまな仕掛けをクリアしていくパズルアクション。ドット絵でありながら、じつは3Dで構成されており、懐かしくも新しい驚きを体験させてくれる。
2次元の世界の住人であるゴメズを操り、世界中に散らばった「金色のキューブ」を集めよう!
ゲームの目的は、各ステージに配置された「金色のキューブ」の入手すること。それぞれは小さいキューブだが、8つ集めると大きな1つのキューブとなり、別のステージへの扉を開くカギとなる。
シビアなアクション要素はないが、上下左右にスクロールするステージをジャンプで渡り歩いたり、ツタをよじ登って移動したりと、主人公のゴメズはユルめな見かけながらも、かなりの行動派だ。
本作の最大の特徴となるのが、ゴメズの持つ「3次元に干渉する力」。これはゲーム画面を“上から見て90°ずつ、横方向に回転できる”能力で、1つのマップを“任意の4方向”から立体的に見ることができる。
しかも、回転後は奥行きを無視した2Dマップになるため、3Dではズレのあったマップでも、ジャンプなどで乗り移れる。行き止まりだと思ったら“画面を回転”させて、先に進めるルートを見つけ出していこう。
ゲーム開始直後、ゴメズに世界崩壊の危機を知らせ、キューブを集めるように指示する「ドット」と名乗るナビゲーションキャラクターが登場。彼女(?)が目下の行き先である地点を身をもって示してくれる。基本的には、その場所へと通じるルートを探していけば、道が開かれていく。
ちなみに、高いところから落ちたり、足場のない場所へと落下してしまうとゴメズは倒れしまうが、ペナルティはとくになし。倒れる直前からすぐ再開されるので、目的地へのルート探しに集中できる。
ゲーム黎明期には、「右へ10歩移動したあと、左へ3歩移動するとアイテムが出現する」といった、隠しコマンド的な要素が盛り込まれた作品が流行した時期があった。じつは、この『FEZ』にも、それに近い謎解きが盛り込まれている。それが「アンチキューブ」の存在だ。
「アンチキューブ」は、画面を回転させることで簡単に見つかる「金色のキューブ」とは異なり、“ゲーム内で行える行動を、特定の順番で実行する”ことで出現する。画面上のオブジェクトや背景、ゴメズ以外の住人たちに隠されたヒントから、正しい手順を導き出そう。
扉を抜けた先にある各ステージには、緑があふれていたり、お城のようだったり、ゴメズによく似た住人たちが居たりなど、そのバリエーションはじつに多彩。
2次元と称されたこれらの世界は、どこに存在する世界なのか? 世界崩壊のカギとされる「キューブ」をすべて集めたとき、その一端が示される。文字による明確なストーリーや解説はないものの、プレイヤーごとにさまざまな考察ができるのも『FEZ』の魅力の1つだろう。
作品全体はドット風に仕上げられているが、主人公のゴメズのアクションはどれも表情も豊か。一定時間操作をしないと、帽子(?)で遊び出したり、最後は居眠りしてしまう。
BGMやSEも80年代を感じられる懐かしい音色で、レトロで神秘的な雰囲気を倍増させてくれる。また、DUALSHOCK 4のライトバーの色が、そのステージのイメージカラーや空の色に合わせて変動したりと、細部までこだわりと作り込みが感じられる作品だ。
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