インタビュー参加者:中西(ディレクター・㈱アクワイア)、宮崎(プランナー・㈱アクワイア)、山本(プロデューサー・SCEJ)/インタビュアー:たま(セールスPR担当・SCEJ)/ライター:はな(PR担当・SCEJ)

本インタビューについて


『勇者のくせになまいきだ。』は、今までRPGの中で主役だった「勇者」ではなく、脇役の「モンスター」に焦点を当てる、いわば「いつもの逆をやってみたら?」というアイデアから生まれた作品です。ですので、プロモーションもいつもの逆ができないか? という思いつきから「取材を受ける自分たちで取材してみるのはどうだろう。」ということになりました。座談会形式で進めたインタビューを、数回にわたり不定期にお伝えします。


当初はPLAYSTATION®3のダウンロードタイトルだった?



――まずは、はじめになぜ、この企画を立ち上げようと思ったのか、そのきっかけについてお願いします。

山本 まず、僕が「ゲームやろうぜ!(以下:やろうぜ!)」という施策をやっていて、「やろうぜ!」は個人のクリエイターに焦点をあてる試みだったんですけど、それと平行して「ゲームやろうぜ!Digital Meister」という、PSP®やダウンロード販売を前提にした、コンテンツそのものにスポットを当てて発掘しようという施策をやっている中で、アクワイアさんから連絡をもらったのがきっかけですね。

中西 それでSCEに行って「やろうぜ!」のチームがやっている企画書を見せてもらったところ、非常に面白くてピュアにうつったんですよね。こう手垢にまみれてないというか。

山本 ちなみに、中西君と僕の関係は、96年に初代の「天誅」を作った仲。制作という意味ではそれっきり関係は途切れていたんですけど、これを機会に何かできたらいいですね? って、中西君と話をしたんですよ。Digital Meisterとか自分がやっているんで「企画を色々聞かせてよ」ってお願いしたのがスタートです。そのとき見せてもらった企画が30本ぐらいあったかなぁ。

中西 僕は去年から、アクワイアの企画の立ち上げを補佐する役目として、いろんなところに持ち込みをやっていたんですが、その中で、まあよくある話なんですが、開発部門でうけても、セールスとかマーケティングとかの部門でポシャるというのがよくありました。そういった部門では、企画を前例にそって売り上げ予測を試算して判断をするのですが、それだとなかなか新しいものって作りにくい。わかりやすいものでないと通しにくいんですよね。ゲームを売るまでには、いろんな人の判断が入るので、ある種しかたないことなんですけども。そういう部分でも、ダウンロードにはチャンスがあると思っていたので、これはやりがいがあるなって。

――最初はダウンロード企画だったんですか?

山本 PLAYSTATION®3のダウンロードタイトルで何かとんがったショートコンテンツみたいなものやれませんかって。

中西 開発費たくさん使って、たくさん売って回収するというやりかたじゃなくても、たとえ小さくても、ニーズがあるところに向けて作って、逆に回収できる範囲の予算で作るということもやっていかないと、停滞感みたいなのは打破できないんじゃないと思っていました。

――どの辺に停滞感を感じていました?

中西 さかのぼると僕が勇者の前に作った「忍道 戒」は、まあこちらが思っているほどには売れなかったんですよね。でも、熱烈に支持してくれる人はたくさんいたんですよ。この人たちが欲しがっているものを、回収できる範囲で作れないか? というのを個人的に思っていたんですが、なかなか難しい。業界的に一番落ちてた時期でしたしね。その後、DSがブレイクして「おっ」と思ったんですが、続くのは2匹目のドジョウ狙いばっかり。一方で、視野広げるとネットやら携帯には面白いコンテンツがいっぱい出てきていて、そっちのがはるかに「なにか新しいものが出てきそう」という期待感が高いって、そういう状況にまずいんじゃないかな?と思って。

山本 「やろうぜ!」はそうした閉塞感を壊すのが趣旨ですし、Digital Meisterは即、制作可能な体制があるなら応募してくださいという形式で、さらに待つだけじゃなくて足でも稼ごうよと。それで、色々な開発会社にあたって。

中西 結果的にパッケージで出すことになりましたけど、低コストかつ、前例のないゲームにはなったんじゃないかと思っています。

――ところで、PLAYSTATION®3への移植は難しいんですか?

中西 あの絵柄でいいんだったら(笑)。

山本 あの絵柄でCELL使いまくって(笑)。


台東区ではビオトープがブーム??


――企画書が30本ってことですが詳しく教えてもらえませんか?

山本 タイトルだけのもの含めて30本です(笑)。

中西 最初はタイトルありきではじめますからね!(笑)


電車忍者企画書

山本 僕らが一番うけたのは「電車忍者」という企画なんですよね。

中西 電車の車窓から見えている家の屋根屋根に忍者が走っている。ただそれだけなんですが。男の子しかやらないんですかね? 電車乗ってボーッとしながら流れる景色を見て、キャラクターを走らせる妄想。

――僕はやらないですよ!

中西 あ! そういえば「電車忍者」の企画書持ってきました。ペラ1枚なんですけど、その日の朝に通勤電車の写メで撮っただけのもの。ワンボタンで意外に遊べるのが特徴。コレです。
この企画書、まだ詳しく考えてないと思うんですが!(笑)

中西 いやいや、ボタンを押していると着地して走るんですよ! ボタン離すとジャンプ。これプロトタイプ作ったんですよ。フラッシュで。

山本 携帯の無料でいいじゃん?(笑) ともかく、一番やりたいって中西君がこだわって主張したのが、「ビデオトープ」、のちの「勇者のくせになまいきだ。」だったんですよ。これ初代の企画メモ。


ビデオトープ企画書
(画像は6枚あります)

中西 「ビオトープ」という活動というか思想が原点なんですよ。ビオトープというのは、トンボやメダカが生息している水辺などのことで、昔はそういう場所が人間の生活環境のそばにもたくさんあったじゃないですか。それが開発という名のもとに、どんどん減少していっている。もう一度そういった環境を取り戻そうという活動が最近盛んで、ゲームとして料理できるんじゃないかと思ったのが発端です。

――これ嘘ですよね? 台東区でブームって。ビオトープが。

山本 嘘です。アクワイアさんの所在地が台東区だってだけで。社内プレゼンの時の企画書にも入れたけど誰にも伝わらなかった(笑)。

中西 企画書の段階で基本の絵はできてますよね? 大作RPGのキャラみたいなの(笑)。

――企画書をこのWEBで公開しちゃいましょう!

中西 あ、電車忍者のプロトタイプのフラッシュおきましょうか?

――え?いいんですか?

中西 いいですよ!

――ところで、企画書に書いてある「粘菌と迷路」って気になるんですが。

中西 実験があるんですよ。粘菌が迷路を最短ルートで解くっていう。詳しくは「粘菌 迷路」とかでググッてください。こういった、「自己組織化」っていうんですけど、有名なものにはライフゲームとかがあって、個々の独立した単純な動きが、多様な全体像を作り上げるっていう、ゲームデザインの手本になるものなんです。

山本 テーマ的には真面目なところから入っていますよ。まぁ最初はピンとこなかったんですけどね(笑)。変にアカデミックな作品みたいになると居心地悪いから「とりあえずタイトルつけないと」ってところで何かはじけて「勇者のくせになまいきだ。」というタイトルが決まりました。

――タイトルはさっと出てきたんですか?

中西 そうですね。アカデミックな方向から、もっとゲーム然とした方向にもっていくことになったときに、じゃ、目的として勇者を倒すのがわかりやすいだろうと。そのときに、僕のネタ帳にいつか使おうと思ってたこのタイトルがあったので、これはここで使うしかない! っていうのと、F先生へのリスペクトもかねて。

――そこから始まってるんですね(笑)。

山本 2ちゃんの書き込みだとようやくジャイアニズムを体現したゲームがでてきたって。

一同 どんなだよ!

――テーマ的なことを言うと、作り方は「アンチテーゼ」ですよね? 続編を作るのではなく、ストーリーボリュームとかでなく、思いつきありきで何だか楽しそうだからやっちゃえ! って見えたんですが(笑)。

中西 いや、一応はもっと考えてますけど(笑)。けど、そういう「ゆるさ」「おおらかさ」を感じさせるものを作っていきたいというのはありますね。たくさんの人に売るためには、どうしても最大公約数を取る必要がでるっていうか、なくなっていっちゃうものがあるんですよ。そんなタイトルばっかりだと業界の雰囲気も重くならないですか? みなさん勢いももっと大切にしましょうよ、と。そういうおおらかな雰囲気があったほうが、若い人も業界に入りやすいでしょう。

――開発費を使うようになったから、飲み屋の勢いだけで作れなくなってますしね。

一同 (笑)


とにかくモテたかったんです!


中西 もうひとつ、制作理由がありますよ。それは「モテたい!」ってこと。これが一番の重要なキーワード。みんな同じ思いだったんで、企画会議の中でひとつになれた瞬間でした! PlayStationのころのSCEさんタイトルのモテ感っていいですよね~。僕、当時「天誅」とか泥臭いゲームを作ってたから余計うらやましかった。笑

――漢(おとこ)から絶大な支持を受けていたあのゲーム!いいじゃないですか!

中西 でもね。ウンジャマラミーとかやりてえよ! と。
モテない人の恥ずかしい努力になるかもしれないですけど。

山本 かつてないよね。モテ願望が出てるゲーム。

――で、これモテそうですか?

中西 だって女性は「天誅」とかしらないですもん。

――でも、腐女子とかは多分知ってますよ。勇者も、腐女子系じゃだめなんですか?

中西 いいですよ。ちやほやしてくれるなら。

一同 もちろん、表参道歩いているような女の子の方もいいですけど!

山本 それとね、Tさんがほめてくれたように音楽もモテ願望の現われですよ。これもモテる曲でいこう! 昔のピコピコ8ビット感じゃモテないだろうとこの曲にしました。

中西 自分のリビドーを認めるのは物作る人間には重要なことだと思います。若いときはかっこつけて、ストレートに「モテたい」とか言えなかったじゃないですか? かっこつけちゃうんですよ。「天誅」やってたときにできなかったじゃないですか?

山本 ちょっとやりましたよ。

中西 そういや、城に行って壁に貼りついていたりしてましたよね、山本さん。しかもモデル立ち(笑)。

――あはは。


パロディをやりすぎて怒られました


――制作秘話的な話もあれば教えてください。

中西 そうですね。最初の企画を見て企画準備をして企画つめて頑張って1ヶ月くらい? 基本的なシステムはそのときできましたねぇ。

――物語で押すゲームとかボリュームが大きいものだけがゲームじゃないんだってもうきちんと言いたいですよね?

中西 うーんでもね。保身のためにも言っておくけど、そういうゲームも良いと思うんですよ。いろんなものがあったほうがいい。それに、そういうのがこのゲームの元ネタにもなってるわけですし。大作RPGというステレオタイプがなかったら生まれなかったゲームだしね(笑)。

山本 権利といえばね、このゲームはパロディのエッセンスが満載なんですが、そういう文化は漫画とかのほうがゆるくていいですよね。

――漫画とゲームは競合にならないからいいんでしょ。宣伝にはなるけど競合にならないから。ゲームとゲームは厳しいんじゃないんですか?競合だし!

中西 このゲームがド○クエとかの競合に!? なるわけないじゃないっすか!!

一同 ならないんだ!(笑)

――ところで、宮崎さんの話ききませんか? 開始50分でほとんど話してないですよ。

宮崎 アカデミックなゲームなんだろうな。と思ったらパロディで良いと聞いて、やりすぎて一度怒られたとか。

――どのくらいやりすぎたんですか?

宮崎 そのまんまだったりしましたね。勇者の名前が。

――あー、ロ●とかリ●クとかですか?

山本 それはさすがにね(笑)。システム的なところで言うと? パロディはゲームの形ができてから乗せていった要素だし。

宮崎 システムのところだと、割と変わりましたよね。

山本 予定になかった要素を随分足したよね。

宮崎 モンスターのアップグレードもミッションモードもVSモードも堀パワーもなかったし。図鑑をやるのも決まってなかったですよね?

中西 ダウンロードからパッケージにするってことで、ものすごい増やしましたね。ボリュームもシステムも。でもまぁ、これだけ遊べて3980円は安いですよ。間違いなくお買い得。って、ボクがいうことじゃないですけど(笑)。

山本 Tさんのおかげですね。価格を抑えられたのは。

――ゲーム制作論的なことで言うとビオトープがあってこれをRPG的再解釈しますとしてますが、そこに行くまでに何かあったんじゃないですか?

中西 僕のゲームをやってくれてる人ならなんとなくわかってもらえるかもしれないですけど、僕、ザコが好きなんです。RPGやってて、あっさり経験値のために殺されるザコたちの、勇者にエンカウントする前にあっただろう彼らの生活にスポットを当ててみたかった。彼らだって、どっかで生まれて、飯くって、糞して、恋をしてとか。そういう背景。

――交尾とかして?(笑)

中西 そうそう。で、その過程でたまたま勇者と出会ってしまったために、戦うコマンドで殺される。そういった世界を表現したいというのが、ひとつネタとしてあって、その部分と、さっきのライフゲームとかのネタがかみ合った。あとは、賢そうな言葉をモテるために入れて企画書ができた。それにモテそうなドット絵というチョイスと、賢そうな言葉を入れつつ企画書ができた。そのうえにPSP®で出すということで、勇者を倒すというゲーム全とした目的をあたえつつ、短い時間でテンポよく遊べるようにした。その辺で、だいたいまとまりましたね。単純に、ゲームを作ることについての構えも含めて、肩肘張らずにおもろいと思ったことをやってけるんだってことを実証したいですね。

――ドット絵というのは?

中西 基本は趣味ですね。ただ、シンプルかつ骨太なゲーム性、それこそファミコンライクなものを作りたいというのは当初からあって、それを象徴するためのチョイスでもあります。 反論はそこそこありましたけど、押し切ってしまいました。今回の企画は、僕の好きなものを好きなように詰め込めたわけですけど、単純に、ゲームを作ることについての構えも含めて、自分が好きなもの、おもしろいと思ったものでやっていく方法はあるんだってことを実証できればいいですね。

山本 この企画を麻雀でいうと、残りツモ一回の状況でリーチかけて、ツモった牌でカンしてリンシャンで一発ツモって裏4枚みたいな作品。それだけで、倍満みたいなところまでいきたいよね。

――僕のイメージ鳴き三色なんですけどね。

山本 安いじゃないですか!

――安いですよ! 基本的には!

中西 鳴き三色は鳴き三色でも、2着目の親リーを止める鳴き三色ですよ。絶妙な鳴きで喰い下がってアガリきるっつう。でも、アガってみたらアガリ2着っていうオチつきの。

――野球に例えると? 王・長島がメジャーだとしたら?

中西 パ・リーグじゃないっすか? いい意味で。

――じゃあダルビッシュですか?

一同 え?

――だってモテたいんだし(笑)。

山本 マー君がダルビッシュほどかっこよくないのにananに載ろうとしてる感じですかね!

―その2に続く―


このページのトップへ戻る

トップに戻るボタン