『Returnal』セレーネの誕生

『Returnal』の主人公セレーネ・ヴァソスに命を吹き込む過程をHousemarqueのクリエイターであるハリー・クルーガー、ヴィル・キヌーネン、グレゴリー・ローデンが語る。

チームメンバー

ハリー・クルーガー

ゲームディレクター

ゲームデザインへの情熱溢れるクルーガーは、ゲームプレイのプログラマーとしてキャリアを開始。過去12年にわたってアーケードゲームのルーツを保ちながら、Housemarqueのクリエイティブ面で中心となる役割を果たしてきた。

ヴィル・キヌーネン

アートディレクター

キヌーネンはHousemarqueにアートディレクターとして参加する前から、キャラクターのコンセプトデザインで長いキャリアを築いてきた。手がけたプロジェクトは、『ドラゴンエイジ:インクイジション』『Horizon Zero Dawn』『Destiny 2』『Deadpool』など多数。

グレゴリー・ローデン

ナラティブディレクター

オーストラリア出身のローデンは、世界観、メッセージ、そして問題提起を通じて良質な物語を伝えることを目標としてきたストーリーテラーだ。手がけたプロジェクトは、『Control』『Quantum Break』『Gravity』『Prometheus』『World War Z』など多数。

「セレーネ」の着想

ローデン:ハリーとハリ・ティッカネン(Housemarque共同創設者)が、オリジナルのコンセプトとゲームの核心となる「キャラクター主導」「ダークSF」「アクション」「タイムループ・スリラー」といったキーポイントを考えつきました。

クルーガー:私は「ヘル企画」と呼んでいましたが、宇宙飛行士が危険な惑星に緊急着陸してタイムループに囚われ、死んでも逃げられないという地獄のような世界です。この設定は、制作初期からかなり明確でした。

ローデン:このビジョンを元に、ナラティブチームと私が、主人公の人物像を構築し始めたんです。まずストーリーの始まりと終わりを決め、その設定から、セレーネというキャラクターを考えていきました。名前を決めるのは二の次。まず、アトロポスという未知で危険な世界と対照的な人物であるべきだと考えました。共感できる人物で、非常に頭が良く、そして何よりも人間味があることを重視したんです。

クルーガー:盛り込みたいテーマもいくつかありました。ラブクラフト風、コズミックホラー、そして精神的なレイヤーをストーリーに加えること――なのでキャラクターには個人的なトラウマを抱える必要があった。

ローデン:それを念頭に、プレイヤーがゲームを進めるごとにセレーネを理解していけるよう、私たちは物語をレイヤーごとに作り上げました。

キヌーネン:私がプロジェクトに参加した頃には、メインキャラクターは既に完成していました。このパワフルな女性主人公を具現化することが私の仕事でしたが、ありがたいことに、私のイメージとうまく共鳴したんです。私にとってセレーネは、まるで集合意識からまさに抜け出そうとするキャラクターという印象でした。私が最初に描きあげたイメージは、主人公のグレースケールのスケッチで、ハリーのスマートフォンの背景になっています。その後2年間私たちが行うスライドショーのベースにもなりました。

セレーネの物語を形作る

クルーガー:Housemarqueにとって、ゲームプレイは常に最優先事項です。心に響くゲームプレイのアイデアを作り上げたら、それを採用し、物語とアートディレクションで支えます。例えば「キャラクターがこんなに速く走れるなんておかしくないか?」と自問することはありません。代わりにこう問います。「高速移動は楽しい。キャラクターの設定でこれをどう支えられるか?」こうすることで、物語との不一致を避け、ゲームプレイでストーリーを強化できます。プレイヤーとしてのアクションが、セレーネの背景と同じく、セレーネ自身を作り上げるのです。

恐怖に打ちひしがれてしまうくらい、感情的に崩壊したり怖がったりするキャラクターにはしたくありませんでした。ゲームプレイで見せるような素晴らしい偉業と、大きなギャップができてしまうからです。そのため私たちは彼女に「断固たる決意」を持たせ、それを中心的な物語のテーマにしました。自分の目標を達成するためにどこまでやれるのか? 何を犠牲にできるのか?

ローデン:私たちの目標は、ミステリアスであり恐ろしくもある、プレイヤーの中に残るような物語を語ることでした。私たち自身、多くの疑問を残すような物語に影響を受けてきましたから。こういった物語は、プレイヤーによる解釈が重要になってきます。私にとっては、最初は戸惑い、理解しきれない物語というのが、最高の物語なのです。そのような体験を、パズルのような物語にすることでプレイヤーの皆さんに味わって欲しい。そのために、様々なヒントを配置していきました。

このような意図のため、『Returnal』ではすべてが非常に思慮深いものになっています。プレイするたびに検証されるようなストーリーを作りたいと思いました。『Returnal』では、プレイヤーは読むもの、見るもの、聞くことを積極的に疑うよう求められます。

キヌーネン:デザインの面から言うと、ストーリーテリングはセレーネの決意そのものでした。彼女のアトロポス内外での経験の全てを、彼女の全てで表したかったのです。トレードマークとなっているアストラのスーツから、超常的なまでに効率的な動きまで、全部で表現しています。

セレーネの外見

キヌーネン:セレーネの初期デザインは、アスリートのようでリアル。ゲームプレイのカメラから自然に見える程度にプロポーションだけわずかに誇張したものでした。重要なのは、納得できる技術レベルや感覚を見つけることでした。スーツには、剣やジャンプスラスターといったプレイヤーのパワーファンタジー的な要素が必要でしたが、非軍事的なアトロポスの脅威に対しセレーネが無力で晒されているような感覚を保つ要素も必要でした。

クルーガー:多くのクリエイティブな仕事と同様に、キャラクターを定義することは、言わば反復のプロセスです。高レベルなところから始め、様々なコンセプトを検討しました。初期スケッチの中には、伝統的な宇宙飛行士のスーツに近いものもあれば、宇宙海兵隊風に路線を変更したようなものもありました。地に足のついた人間的な要素と、パワーファンタジー、私たちが追求する手応えと戦略のレベルのバランスを取るために、何度も試行錯誤を繰り返しました。

キヌーネン:ゲームプレイのスピードは、多くのデザイン要素に加え、パラサイトやフックショットなどのセッション内や恒久的なアップグレードに大きな影響を与えています。ゲーム全体を考えるのに、非常にたくさんの情熱を費やしました。

これらの様々な要素を把握し、構成することが課題でした。機能の膨大さに冷や汗をかくこともありましたが、最終的には基本となるスーツは比較的シンプルに落ち着きました。一度にすべてを実現したわけではありません。新しいデザインの要望が上がるたびに、その都度スーツを見直しました。

デザインは、特定の時代や場所を感じさせるものは避けました。ただ、人間の身体的部分はすぐわかるようにしました。奇妙な見た目にある程度の余地を与えるためには、特定の部分でしっかり固めようと思ったんです。

アンダースーツと外のハードパートは分離させ、縫い目や素材はほぼ平凡に、そしてあえて無骨さを出しています。

セレーネのキャスティング

ローデン:ストーリー上、セレーネは過去を追うため、特定の年齢幅に収まることが必要でした。また、様々な精神状態を表現することが求められるため、演じるのが非常に困難であることも。

クルーガー:彼女は人間らしさを非常に多く持ったキャラクターです。親しみやすく、カリスマ性があり、強い意志を持つ一方で欠点もあるという、絶妙なバランスが必要でした。初期に参照したのは、『マッドマックス 怒りのデスロード』のフュリオサ、『エイリアン』のエレン・リプリー、『ターミネーター』のサラ・コナーです。誰もが強く、有能で、妥協のない女性主人公です。しかし、最終的には完璧な青写真は作りませんでした。

これらすべてを捉えるべく、セレーネ役に複数のキャスティングの選択肢を検討した結果、アン・ベイヤーに目が留まりました。私たち3人とも、役に自然にはまる人物だと感じたんです。彼女には、私たちがセレーネに求める自然な決意とカリスマがありました。

キヌーネン:何百枚ものキャスティング写真を見ましたが、アンを見た瞬間、「彼女こそセレーネだ」とみんなに伝えました。彼女よりもぴったりな人は見つからず、最終的に彼女に決定してとても興奮しました。

ローデン:アンを引き立てるため、彼女のストーリーを語るのに強く、独特な声が必要でした。早い段階でジェーン・ペリーを見つけ、すぐに一緒に仕事をしたいと考えました。彼女はセレーネに、洗練さと人間らしさをもたらしてくれた。ジェーンは本当に力強い演技で完璧に演じ、あらゆる台詞にリアリティと誠実さがありました。彼女がセレーネにもたらしたものを私たちは非常に誇りに思っています。

クルーガー:そのとおりだね。ジェーンが素晴らしい声を与えてくれて、アンのモーションキャプチャーと相まって、セレーネというキャラクターにまさに生命が吹き込まれました。

ヒーローの常識を覆す

クルーガー:セレーネの母性、年齢、そして全体的なキャラクター像は、多くの意味で、私たちが伝えたかった物語の産物です。まず物語の目標を定めるところから開始し、これはプレイヤーに感情的なインパクトを与えることが重要で、そこから逆行して作業を進めていきました。さらに主人公の過去の中でも重要な子供が関連すること、そして世代間のトラウマというアイデアを検討するということは最初からわかっていました。セレーネは、私たちと同じように、環境と境遇の産物です。『Returnal』では、他のキャラクターを中心に据えることなど考えられません。

キヌーネン:それに関してはほとんど議論しませんでしたね。たしかに、セレーネはノーメイクだし、流行遅れの髪型も気にしないし、スーツは比較的ユニセックス。ですがこれらが特に強い主張をしているとも感じませんでした。主人公がこの年代であるのは新鮮でしたが、それは物語上必要なことでした。

ローデン:私にとって最高のキャラクターとは、ただのキャラクターではなく、共に時間を過ごすことになる人のこと。ネットでの書き込みを読んだりプレイヤーと話したりするうちに、セレーネはそのような人として認識されたことがわかりました。これには大きな意味があります。私たちのディレクションに何も悔いはありません。セレーネが持たないものすべてが、彼女自身を作り上げているのです。

キヌーネン:偶然、『ゲーム・オブ・スローンズ』のグウェンドリン・クリスティーとの比較を目にしました。私たちの中でまったく議論しなかったことですが、非常に光栄に思います! Housemarqueは北欧に拠点を持っていますからね。背が高くて、筋肉質な女性というのは、ここではそこまで珍しいものではありません!

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エディション:

通常版

  • Returnal™

デジタルデラックス版

  • Returnal™
  • エレクトロパイロン・ドライバー¹
  • ホローシーカー¹
  • 感覚拡張剤 x1¹
  • アドレナリン増幅装置 x1¹
  • 脈打つ肉塊 x1¹
  • PS5™のPSNアバターセット
  • デジタルサウンドトラック
プラットフォーム:
PS5
発売日:
2021/4/29
メーカー:
ソニー・インタラクティブエンタテインメント
ジャンル:
シューティング
音声:
日本語, 英語
表示言語:
日本語, 英語
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² 「シシュポスの巨塔」、セレーネの家が舞台となるイベント、デイリーチャレンジはCO-OPでは利用できません。

Returnal™ ©2021-2022 Sony Interactive Entertainment Europe. Developed by Housemarque Oy. “Returnal” is a trademark of Sony Interactive Entertainment Europe. All rights reserved.

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